2013年12月01日

“香りが宿る峠” のサバ定食

先日、嬉しい再会があった。数年前、「ダークツーリズム」 に参加したときに知り合ったHさんと3年ぶりに再会したのだ。

Hさんは日本語が非常に堪能。日本語が上手な韓国人はたくさんいるが、中でもHさんは私が知る限りもっとも正確で自然な日本語を使われる方の1人だ。

3年前、またお会いしましょうと連絡先を交換して別れたのだが、なかなかお互いの都合が合うタイミングが見つけられないまま時が過ぎていった。2人とも釜山に住んでいるので、「いつでもまた会える」 と思いつつ・・・。

そして最近になって、ようやく再会が決まった。青沙浦(チョンサポ)で遅い昼食を食べることに。地下鉄の萇山(チャンサン)駅で待ち合わせ、Hさんの車に乗せてもらって青沙浦へ。私は6年近く釜山で暮らしているが、青沙浦に行くのはこれが初めてだ。

萇山駅から坂を上り、やがて下り坂になったかと思うと目の前に海がぱーっと開ける。実に爽快な景色の道路だ。そして車はほどなく、この日の目当ての食堂に到着。

食堂の目の前には해월정사(海月精舍=ヘウォルジョンサ)というお寺が建っている。由緒のある有名なお寺なのだそうだ。海印寺(ヘインサ)の初代坊丈や、曹渓宗(チョゲジョン)の第6・7代宗正も務めた성철(性徹=ソンチョル)という今は亡き高僧も、一時期ここに滞在していたそう。

食堂の名前は 「향유재」(ヒャンユジェ)。韓国の伝統料理専門店で、店内も落ち着いた雰囲気だ。文人たちもここでよく集うのだとか。店名の 「향유재」 には、「향기가 머무르는 고개」(香りが宿る峠) という意味が込められているそう。

この日は店に入ったのが食事どきではなかったので空いていたが、食事どきにはかなり賑わうのだそうだ。またこの日案内された席からは見えなかったが、店の奥の方からは海が見下ろせるのだそう。夏には涼しい潮風がさぞ心地いいだろう。

各種定食やピビムパッ、チョンゴル類、アグチム、スジェビ、カルグクスなどメニュー豊富だが、Hさんによるとこの店の一番人気はダントツで 「고등어 조림」(コドゥンオ チョリム=サバの煮付け)なのだそう。私はそれをいただくことに。Hさんはサバはあまりお好きではないとのことで、スジェビを注文された。

あらためて再会を喜ぶ。あれから3年も経ってしまったとは驚きだが、お変わりないご様子で何よりだった。互いの近況や食べ物の話、仕事の話などに花が咲かせていると、注文した料理が運ばれてきた。

고등어 조림 정식(サバの煮付け定食▼)。


主役のサバは、厚い輪切り大根とともにヤンニョムで煮付けてある。色は赤いが全く辛くない。ヤンニョムもさることながら、サバそのものも身がふっくらしていて非常においしい。サバの旨みがしみこんだ大根も美味。そのままいただいてもよし、サンチュで包んで食べてもよし。ご飯によく合う。サバのメニューとしては煮付けの他に塩焼きもあるそうだ。


大根の干葉(시래기=シレギ)がたっぷり入ったスープ시래기국(シレギグッ)はエゴマの風味がきいていて、深みのある優しい味わい。釜山や慶尚道では方言で시락국(シラックッ)と言われることが多い。

Hさんの注文した감자 수제비(ジャガイモのスジェビ▼)。青唐辛子のスライスが入っているため、意外にぴりりと辛い。


少し味見させてもらったが、ずっしりとした重量感のあるスジェビ(すいとん)とジャガイモがたっぷり入っていて、ボリュームがある。


使われている食器も素朴な感じで素敵だ。食器は一部、展示・販売もしているようだ。

おいしい食事とおしゃべりを楽しみ、コーヒーでも飲みましょうと店を出た。Hさん、ご馳走さまでした。


향유재(ヒャンユジェ)
釜山市海雲台区中2洞439
(051) 704-8668
  

2013年11月16日

明太子料理専門店

知人から、センタムシティに명란(ミョンナン=明太子)料理の専門店ができたと聞き、早速夫と行ってみた。BEXCOを背にして立ち、ホームプラスとトランプワールドの間の道をまっすぐ進むと10分弱で到着する。


今年夏にオープンしたばかりだそうで、店内は明るく清潔そうな印象だ。早速メニューを見ながらどれにしようかと考えていると、店員さんが気を利かせて説明しに来てくれた。


一番基本的なメニューは 「명란 뚝배기」(ミョンナン トゥッペギ)。明太子を使ったスープ料理とご飯、おかずのセットだ。スープ料理は 「명란 순두부」(明太子スンドゥブ)、「명란 맑은탕」(唐辛子を使っていない明太子入りスープ)、「명란 매운탕」(唐辛子入りの辛い明太子スープ)の3種類から選ぶ。いずれも8,000w。私たちは 「명란 맑은탕」 をいただくことにした。

テーブルには見慣れないものが置いてあった。直径1.5cmほどの白いラムネ菓子のような軽くて硬いものが2つ、小皿に入っている。よくよく見ると表面に물티슈(ウェットティッシュ)と書いてある。もしやこれに水を注ぐとウェットティッシュになるのかと、恐る恐るやってみると、予想通り瞬間的にボワッとふくらんでウェットティッシュになった。

世の中いろんなものがあるものだと感心していると、料理が運ばれてきた。


1人用のトゥッペギ(土鍋)に入ったアツアツのスープ。明太子とスケトウダラの白子がたっぷり入っている(▼)。いずれも美味。スープには青・赤トウガラシのスライスが少量入っているので、ほんのかすかにひりりとした辛さを感じる。

ほかに豆腐やえのきだけ、春菊、미더덕(ミドドッ=エボヤ)なども入っている。ミドドッは海鮮スープなどにはよく入っている。そのものは非常に固くて噛み切れない。噛みつぶすようにすると磯の香りがする液体が飛び出してくる。


おかずは、명란젓(ミョンナンジョッ=明太子の塩漬け)、白菜キムチ、オイ(キュウリ)キムチ、ホウレンソウの和えもの、大根の和えものの5種。いずれもお代わり自由だ。

この 「ミョンナン トゥッペギ」 に 「明太入り卵焼き」 か 「明太子の酢豚風」 のいずれか1品を追加したのが 「明太ランチセット」(各10,000w・11:30~14:00限定)。

さらに、「明太ランチセット」 に 「明太子をまぶした海苔」 を追加したのが 「明太定食」(12,000w)。

ほかにも、明太子ピビムパッ(10,000w)や明太子トッゥペギチョンゴル(12,000w)、明太子おにぎり(5,000w)などのメニューもある。この店で使われる明太子はすべてロシア産だそうで、明太子の塩漬けや明太子海苔は販売もしている。

食後にはヤクルトのサービス。なかなかおいしくいただいた。次回は是非、明太子入りの卵焼きや明太子の酢豚風などの創作料理もいただいてみたい。

명란명가 (ミョンナンミョンガ=明卵名家)センタム店
釜山市海雲台区佑2洞1456番地 グッドセンタムビル1階
(051) 747-2919
営業時間:9~21時
http://myeongranga.hubweb.net/?page=6
  

2013年11月04日

クジラ肉の寿司からプルコギまで 2

つづき

続いてプルコギ。特製タレで味付けした赤身を目の前で焼いてくれる。使うのは鉄板ではなく石板。両面をさっと焼いたものをそのままいただいてもよし、塩をつけていただいてもよし。牛肉の焼き肉のようでもあり、自分が今何を食べているのかだんだん分からなくなってくる。


続いて수육(スユク=茹で肉)の盛り合わせが登場(▼)。釜山のクジラ肉専門店で一般的に出される料理といえば、ほとんどがこの茹で肉の盛り合わせだけなのだそうだ。この店のコース料理がいかに多様かが分かる。

左から体長6m以上にまで生育したミンククジラのウネ、それより若いミンククジラのウネ、クジラの舌、丸いのは腸、その上が尾の湯引き(▼)。クジラは体が大きいだけあって、舌も大きなテーブルほどあるそうだ。


また、6m以上に生育した成獣の肉は、茹でると50%ほど大きさが縮んでしまうそうで、「바가지 살」(バガジサル=ぼったくりの肉の意)とも呼ばれるとか。若いクジラの肉は20%ほどしか縮まないそうだ。

茹で肉は、ミョンイ(ギョウジャニンニク)と明太子(▼)と一緒にいただく。同じクジラでも、成獣と若いものでは肉の味わいが違う。食感は若いクジラの方が柔らかいが、かめばかむほど旨味が感じられ深い味わいが楽しめるのは成獣の方だ。「若鶏と、よく生育した鶏の違いと同じですよ」 とコン社長。


舌は、牛タンのような食感があるのかと思ったが、予想とは違い非常に柔らかかった。

そしてコースの最後の1品は竜田揚げ(▼)。ニンニクなどで下味をつけた赤身をカラリと揚げてある。レモン汁を搾っただけでも充分おいしいが、ポン酢ソースにつけて食べるとよりおいしさが引き立つ。


クジラのコース料理は以上6品。小学校の給食で出た 「コロ」 のイメージしかなかった私にとって、クジラとはこんなにおいしいものだったのかと衝撃的だった。また、調理方法の多彩さにも驚いた。さまざまな味わいのクジラを少しずついただけるので、満足感も大きい。

「クジラ肉は特有の臭いやクセがあって食べにくい」 という漠然としたイメージがあったが、完全に覆された。「昔、食べ物が豊富ではなかった頃は、イルカも食べていました。イルカは雑食性なので、臭いも強いし腐敗も速いんです。それに比べてミンククジラは主に動物プランクトンのオキアミを食べるので臭いもありません」 とコン社長。

昔は釜山でも、豚肉よりクジラ肉の方がよく出回っていたほど、市民に馴染みのある食材だったという。「その時代を経験している世代の方にとって、クジラ肉はまさに郷愁そのものです」 と言うコン社長の言葉通り、店内には比較的年輩の客が多かった。一種のソウルフードと言えるだろう。

生き生きと働くコン社長に、店が繁盛していると毎日が楽しいでしょうねと水を向けると 「そうですね。お客さんのおいしかったという一言が何よりうれしいです。特に、他の店よりおいしいと言ってもらえるとやりがいを感じますね」 と。クジラ肉を使った新メニューも開発中だという。大好きなクジラ肉の魅力を、多くの人に知ってもらいたいという情熱が感じられる。

クジラ料理についての説明を聞きながら、コン社長のお肌がやけにツルツルとハリ・ツヤがいいことに気がついた。クジラ肉には美肌効果もあるのだろうかと思うほど。

さて、この日はコース料理に加え、「普段は20万ウォン以上会計されたお客さんにサービスでお出ししてるんですけど・・・」 と、特製のカンジャンケジャンとセウジャンも出してくれた。ワタリガニの醤油漬けとエビの醤油漬けだ。

「塩辛くなくておいしいでしょ」 というコン社長の言葉通り、いい塩梅だ。甲羅から外した身の側は、縦半分に切ってかぶりついて身を吸いだすようにいただく。磯の香りの中に旨味たっぷりで、思わずうなるおいしさだ。殻をむいて漬けたエビも、何とも言えないおいしさ。


ミソたっぷりのワタリガニの甲羅にはご飯を入れて、ご飯にミソをからめるようにしていただく(▼)。こちらも絶品。


どれも非常においしくいただいた。クジラがこんなにもおいしいとは。コン社長が確かな目利きで仕入れたクジラ肉を使っていることに加え、クジラ肉に対する社長の情熱が料理に込められていることが、おいしさの秘訣だろうと思った。

ミンククジラのコース料理(1人50,000w)の他に、ミンククジラとマグロのセット(2~3人分70,000w、3~4人分100,000w)、ミンククジラの盛り合わせ(70,000w、100,000w)などもある。コン社長は日本語ができるので、注文は日本語でOK。

やたい(야타이)
釜山市中区南浦洞2街5
(051) 242-9060
営業時間:午後4時~午前2時(週末は3時まで)
定休日なし
  

2013年11月03日

クジラ肉のコース料理 「やたい」 1

南浦洞(ナンポドン)のロッテ百貨店光復(クァンボク)店のほど近くに 「やたい」 という名前の食堂がある。若き社長・孔明浩(コン・ミョンホ)さんが営業するミンククジラとマグロの専門店だ。釜山にはクジラ肉を食べさせる店は少なくないが、「やたい」 は釜山で唯一、本格的なクジラのコース料理を出す店として知られる。

これまで釜山でクジラと言えば茹で肉を盛り合わせにして出すスタイルが中心だったが、「やたい」 では刺身や寿司、唐揚げなどさまざまな調理法のクジラ肉をコースでいただけるとあって、オープンして2年半、平日でも客足の絶えない人気店となった。一部では 「釜山で今一番ホットな店」 とも言われる 「やたい」 に、韓国人の知人の案内で行ってみた。


飲食店が立ち並ぶ細い通りにあって、「やたい」 とひらがなで書かれた看板やちょうちんは一際目を引く。店内はのれんや浴衣、招き猫、力士の写真、ポスターなど、日本を連想させるものであふれている。それもそのはず、社長のコンさんは大学のホテル観光学科に通っていた約10年前、東京・お台場の寿司店で働いていたことがあるのだそうだ。もともと日本の食文化に興味があったといい、築地市場もよく覗きにいったそう。


韓国に帰国後、料理人としてプルコギの店で働くなどの経験を経て、2011年に 「やたい」 をオープンした。店名は、屋台のように気軽に食べに来てもらいたいとの思いで名付けた。

店で扱う食材としてクジラを選んだ最大の理由は 「私が1番好きな食べ物だからです」。海沿いの多大浦(タデポ)出身のコン社長は幼い頃、父親に連れられてクジラ肉を売る屋台によく行ったという。また、クジラ肉は部位ごとにさまざまな味わいがあり、一般的な食堂ではあまり扱っていないという点にも目を付けた。さらにマニア層も厚い。

店で扱うのはミンククジラ。混獲され競りにかけられたものを直接買い付け、卸売りもしているという。1億ウォンという値がつく1.5トン級のクジラを丸々1頭買い付け、自社工場で急速冷凍するため、鮮度のよいクジラを提供でき、さらに価格も抑えることができるとのこと。

私にとってクジラといえば、小学校の給食でたまに出た 「コロ」 のイメージしかない。コロはクジラの皮を加熱処理して脂肪分を除き乾燥させたもので、給食では確か煮物かおでん種として出てきたと思うが、小学生の私には口に合わなかった。その独特な食感から 「得体の知れない食べ物」 という印象で、コロが出るとがっかりした記憶がある。

それ以来、好んでクジラ肉を食べてみようと思ったこともなく、大人になってからクジラ肉を食べた記憶はない。数十年ぶりのクジラ肉だ。それもクジラ肉の寿司やプルコギという聞いたこともないメニューが出てくるとのことで、期待が高まる。

つきだしは生牡蠣、홍합(ホンハッ=イガイ)の和え物、味噌汁、サラダ。




そしていよいよクジラ肉の登場。まずは刺身と握り寿司(▼)。写真では刺身と寿司が一緒に並んでいるが、本来は1品ずつ順番に出てくる。刺身(手前)は左からウネ(ウネス)(アゴから腹部にかけての部分)、赤身、尾羽の湯引き。


ウネは刺身醤油をつけていただく。コリコリとした独特の食感の皮と、トロのように口の中でとろける皮下脂肪のコントラストが絶妙で、やみつきになる。クジラとはこんなにおいしいものだったのかと、まさに目から鱗だ。

赤身は牛肉のような食感。同じく醤油をつけていただく。適度な歯ごたえがあり、脂が少ないのであっさりといただける。一般的にクジラと聞いて連想するようなにおいやクセもなく、おいしくいただける。

尾羽の湯引きは特製の멸치액젓(カタクチイワシの液体塩辛)をつけて食べるのがおすすめ。キクラゲを連想させる食感。尾羽そのものは非常に淡泊な味なので、適度な塩気のある液体塩辛との相性抜群だ。

握り寿司は3種(▼)。クジラ肉と寿司という意外な組み合わせは、寿司店やプルコギ店で働いたことのあるコン社長ならではの独創的なメニューだ。


ネタは左からウネの刺身(▲)、ウネを茹でたもの(▼)。ウネ刺身の寿司はワサビをつけて刺身醤油で。茹でウネの寿司には명이(ミョンイ=ギョウジャニンニクの葉)を一巻きし、明太子をトッピング。醤油はつけずこのままいただく。明太子の味がウネのおいしさを引き立てる。


赤身で握った寿司は、社長自ら目の前でバーナーであぶってくれる(▼)。オリエンタルソースがかかっているので、こちらもこのままいただく。フルーティーで爽やかなソースが食欲をそそり、後を引くおいしさだ。



刺身、寿司の次は육회(ユッケ▼)。細切りにした赤身をコノワタ(ナマコの内蔵)で和えた一品。あっさりした赤身に濃厚なコノワタがからまって、コクのある味わいが楽しめる。お酒のつまみにもぴったりだ。


つづく  

2013年11月01日

イシモチが丸ごと入ったスープ

釜山でも少しずつ気温が下がってきて、秋から冬への移り変わりが感じられるようになってきた。そうなると食べたくなるのはアツアツのスープ料理。

この日は上司と명성횟집(ミョンソンフェッチッ)で조기탕(チョギタン・7,000w)をいただいた。その名の通り、조기(チョギ=イシモチ)を使ったピリ辛のスープだ。


セリや大根、モヤシ、豆腐などの具にまじって、小ぶりのイシモチが丸々1匹入っている。イシモチに塩をして干した굴비(クルビ)の身は適度な歯ごたえがあるが、これは生のイシモチを使っているので身は柔らかくあっさりとしている。スープはほどよくピリ辛で身体が温まる。


おかずも豊富。この店の定番、大根とイワシ(?)の甘辛煮(右上▼)はご飯とよく合う一品だ。


食べ始めたときは気がつかなかったが、大根などの具の下にもう1匹大きめのイシモチが隠れていた。小さめながらも魚が2匹にたっぷりの野菜や豆腐も入っているので、けっこうおなかがいっぱいになる。ご馳走さまでした。


명성횟집(ミョンソン/明成フェッチプ)
釜山市東区水晶2洞207-4
(新住所表記では、東区고관로128-1)
定休日:第1・3日曜日
(051) 468-8089
  

2013年10月30日

タコ・エビ・ホルモンの炒め煮

久しぶりに “あの” ナクチポックムが食べたくなって、夫と東莱(トンネ)まで遠征。向かったのは 「ナクチポックム=辛い料理」 というイメージを覆してくれた 「소문난 원조 조방낙지」(ソムンナン ウォンジョ チョバンナクチ)だ。

この店はいつ来てもたくさんの客で賑わっている。1人で来ている客から、家族連れ、友人同士で来ている人など年齢層もさまざまだ。店員さんはほとんどがベテランの主婦といった感じの人で、次々と押し寄せる客に絶妙のチームワークで対応している。

この日は、낙지(ナクチ=テナガダコ)・곱창(コプチャン=牛の小腸)・새우(セウ=海老)の3種が入った낙곱새(ナッコプセ・8,000w)を注文した。すぐ、3種の具材と野菜、タンミョン、そして特製ヤンニョム、ダシが入った浅い鍋が運ばれてきた。テーブルのカセットコンロで加熱する。


しばらく加熱してそろそろフタを開けてみようかと思った頃、ちょうど店員さんがやってきて、大きなヤカンに入ったダシを注ぎ足してさらに加熱。テーブルごとに店員さんの担当が決められているようで、どのテーブルの鍋がどういう煮え加減か、しっかり把握している。


さらにもう少しして店員さんが鍋の中をかき混ぜに来て 「コプチャンが入ってるので(しっかり火を通すため)もう少し煮てくださいね」 と。今度はフタを外していった。

そしていよいよ食べごろに(▼)。


ご飯は料金に含まれており、ステンレスの器にたっぷり入って出てくる。いい具合に煮えたナッコプセをご飯にかけていただく。この店のヤンニョムは甘味さえ感じる。コクがあって非常においしい。コプチャンからもいいダシが出ている。

タコのしっかりした歯ごたえ、エビのプリプリ感、そしてコプチャンの独特の食感が楽しめる。


付け合わせはナムルやキムチ、동치미(トンチミ)など(▼)。


そしてナッコプセをおおかた食べ終えたら、うどん(1,000w)を追加。ダシとヤンニョムも適量追加してくれる。


これまで、最後の締めとして、残ったダシにご飯を加えてポックムパッにしたり、ラーメンを入れたりして食べたが、うどんよりはラーメンやポックムパッの方がダシがよく絡み、相性がいいと感じた。

大変おいしくいただいて、大満足で店を出た。ちなみに店名を日本語にすると、「噂の元祖・朝紡(朝鮮紡績の略)ナクチ(テナガダコ)」。店名の由来についてはこちら

店先の女性2人は昼食を食べ終え、食後の定番、甘ーいミルクコーヒーを飲んでいる(▼)。韓国の食堂にはたいてい、ボタンを押すと紙コップに半分ほど甘いコーヒーが出てくる器械が設置されている。ほとんどが無料。食後は、店先でこうやってその甘いコーヒーを飲む光景をよく見かける。


소문난 원조 조방낙지(ソムンナン ウォンジョ チョバンナクチ)
釜山市東莱区明倫1洞400-1番地
(051) 555-7763, 554-7763
定休日:第2・4日曜日
*テイクアウト可能
  

2013年10月16日

2人なのにご飯が4つ

マラソン大会に向け東莱(トンネ)まで走ってきた夫と合流した後、허심청(虚心庁=ホシムチョン)に行く予定だったが、その前に近くの食堂で昼食を。以前にも2度ほど入ったことがある 「부산한정식(釜山韓定食)」 という食堂で食べることにした。

店内は1階も2階もたくさんの客が入っているようで、店員さんたちは非常に忙しそうに立ち働いていた。どうやら1階の奥は結婚式後の食事会場として貸し切られていたようで、韓服姿の人をはじめ、結婚式に参列したらしき人たちが、食事券を手に続々と入ってきていた。

私たちは入口入ってすぐのところに案内された。ランチメニューの생태탕(センテタン・12,000w)を注文したが、少しして店員さんが 「申し訳ありませんが、생태(センテ=獲れたての新鮮なスケトウダラ)は今切らしています。代わりに명태탕(ミョンテタン=スケトウダラのスープ)はいかがですか」 と言いに来た。

センテタンもミョンテタンもスケトウダラのスープだが、使用するスケトウダラの鮮度の違いで名前が違うのか(?)、とにかく店員さんの提案通りミョンテタン(10,000w)に注文を変更した。「けっこう辛いですか?」 と確認すると、「あ、辛くないのがいいなら、チリでお作りしますね」 と対応してくれた。

「チリ」 は日本語の 「ちり(ちりなべ)」 から来ている。韓国では、唐辛子を入れて辛い味付けにする魚介スープを매운탕(メウンタン)と呼ぶのに対し、唐辛子を入れずに作るスープは지리(チリ)と呼ばれることがある。釜山のフグ料理店でも、フグスープのうち辛くないスープは 「복지리=ポッチリ」 と呼ぶところが少なくない(ポッはフグ)。この店員さんが言った 「チリで作る」 というのも、唐辛子を入れず辛くないスープに仕上げるという意味だ。

もっとも、「チリ」 のような日本統治の名残が残る言葉を今もそのまま使うのは好ましくないため、韓国固有の言葉で言い表すべきだという意見もあるようだが。

さて、その後も結婚式後の食事のため、どんどん客が入ってくる。一度にたくさんの人が入ってくるので、店員さんたちは大わらわだ。

韓国では結婚式が終わると、式に参加した人たちは各自、あらかじめ指定された食堂などに各々移動して食事する。日本の披露宴のように、全員がそろって同じものを同じペースで食べるのではなく、食事場所に到着した人から食べ始め、食べ終わったらそのまま帰って行く。日本とは大きく異なる風景だ。

時々、韓服姿の女性が厨房の方にやってきては、なにやら指示している。新郎か新婦の母親だろう。

そういうわけで、厨房も大忙しでミョンテタンが出てくるまで、しばらくかかった。人間ウォッチングしながら待っていたので、待ち時間も苦にはならなかったが。

やっと出てきたミョンテタンとおかず類(▼)。注文を受けてくれたおばさんがまずミョンテタンとおかずを運んできて、奥の方に向かって 「ご飯2つ~!」 と叫んだ。すると奥から別のおばさんがご飯の器を4つ持ってきて、4つとも私たちのテーブルに置いて行った。

あれ? 2人なのに何故4つ? と思っている間におばさんは立ち去ってしまったので、別のおばさんをつかまえて聞いてみると 「あー、白いご飯を切らして雑穀米のご飯しかないから、せめてたくさん食べてくださいってことで・・・。ご飯の量も少ないでしょ」 とのこと。別に白いご飯じゃなくても私たちは一向に構わなかったのだが、ありがたい心遣いだ。


ミョンテ(スケトウダラ)の身はふわふわでおいしい。大根や白ネギ、ミツバなども入っている。


スープにはごくわずかだが唐辛子のスライスが入っており、スープが残り少なくなってくるとほのかにひりりとした辛さを感じた。辛さともいえないほどのひりり感。いいダシがきいていてとてもおいしいスープだった。


부산한정식(釜山韓定食)
釜山市東莱区温泉1洞169-20番地
(051) 557-2936~7
  

2013年10月10日

行列のできる店 「浦項ムルフェ」

先日、釜山在住の日本人の友人Nさんと、夫と私の3人で昼食を食べに行った。向かったのは、「おいしいと評判らしいよ」 というNさんの提案で、大淵洞(テヨンドン)にある물회(ムルフェ)の店 「원조 포항 물회」(元祖浦項ムルフェ)。大きな看板と店先の水槽が目印(▼)。


いつも行列ができているテジクッパッの店 「쌍둥이돼지국밥」(サンドゥンイテジクッパッ)のすぐ隣にあり、この日もサンドゥンイテジクッパッの前にはこの通りの行列が(▼)。


待ち合わせの時間より早めに着いたので店先の椅子に座って待っていたのだが、そのうち店の入口に空席待ちの客が並び始めたようだったので、店内の様子をうかがってみた。すると、入ってすぐのところに、銀行などで見かける番号札の器械が置いてあるのに気がついた。

비단비」(ピダンビ)や 「동래삼계탕」(トンネサムゲタン)のように、手書きの番号札を店員さんから受け取って順番を待つというのはこれまでにもあったが、食堂で、器械で番号札を引いたのは初めてだった。

そうこうしているうちに友人もやってきて、3人で店先で待っていた。同じように順番を待つ客がたくさんいた。それにしても、こうして外で待っている客にはどうやって順番がきたことを知らせるのだろうと思っていると、やがて店内にいる店員さんの声が、マイクを通して聞こえてきた。「〇〇番のお客さん、どうぞお入りください」。

声の聞こえてくる方を見ると、店の出入り口の真上あたりにスピーカーが取り付けられており、そこから声が聞こえてくるのだった。おそらく昔はいちいち店員さんが外にまで呼びに来ていたのだろうが、そのうちそれでは間に合わなくなって、この方法を採用したのだろう。

さらに自動ドアの上部には小さな電光掲示板があり、そこにも順番がきた客の番号が表示されるようになっていた(▼)。


自動ドアのガラス部分には、テレビで取り上げられたことを紹介するポスターがデカデカと貼ってある(▲)。韓国では、食堂などがテレビや新聞などで取り上げられるのは一種のステータスで、こういうポスターはあちこちで見かける。

しばらく待って、私たちの番号が呼ばれた。店内はぎっしりお客さんで埋まっていた。メニューは、一番人気のムルフェの他にも、各種刺身、ご飯の上に刺身をトッピングしたフェッパッなど豊富。ちょうど旬の전어(チョノ=コノシロ)もメニューにあった。


私たちはムルフェ(9,000w)を注文。事前にネットで韓国人のブログを見たところ、この店はヤンニョムを客が自分で調合(?)するとのことだった。砂糖・コチュジャン・酢・スープの黄金比率が各テーブルに書かれてあり、その通りに、または各自の好みで微調整してムルフェの味を決めていくと。

テーブルには砂糖やコチュジャン、青唐辛子のぶつ切り、酢が置いてある。やかんに入っているのはスープ。


おかず類と、ムルフェに入れて食べる麺や氷(▼)。


しかし、実際に運ばれてきたムルフェには、すでにヤンニョムがトッピングされている状態で、「ヤンニョムはもう(配合が)できてます。このままよく混ぜて、スープと氷を入れて召し上がってください」 と店員さん。「あ、後でメウンタン(海鮮スープ)が出てくるので、ご飯はスープと一緒に食べてください」。


以前は、砂糖山盛り1さじ、酢3さじ、コチュジャン1.5さじ、夏は氷4片、冬は3片・・・と具体的に書かれていて、テーブルでちょっとした料理気分を味わえるようだったが、いつからか、あらかじめ厨房で配合してくるシステムに変わったようだ。そういえばテーブルの注意書きにもそう書いてある。

1.コチュジャンとヤンニョムはすでに配合された状態で出てきます。
2.スプーンを左手、お箸を右手で持ち、全体が均一に赤っぽくなるまで混ぜます。
3.氷5片とククス(麺)を加えます。
4.スープを2カップほど入れます。
5.よくかき混ぜて召し上がってください。

ということで、その注意書き通りにしたものがこちら(▼)。


刺身と、キャベツ・キュウリ・セリなどの野菜がたっぷり入っている。以前、広安里ビーチ沿いで食べたムルフェはシャーベット状のスープがけっこう辛かったが、この店のムルフェは青唐辛子を入れなければ辛くない。韓国人は青唐辛子をたっぷり入れていた。

刺身の歯ごたえと野菜のシャキシャキ感がマッチしておいしかった。暑くて食欲があまりないときでも、これなら食べやすい。


そうこうしているうちにメウンタン(▼)が運ばれてくるので、ムルフェを食べつつ、メウンタンにも手を伸ばし・・・。山椒がきいていてとてもおいしいスープだった。


おいしくいただいて店を出ると14時近くだったが、まだ店先にはたくさんの客が順番を待っていた。少し涼しくなってきてこれなら、真夏にはさぞすごい行列ができるのだろう。

원조 포항 물회(ウォンジョ ポハン ムルフェ)
釜山市南区大淵洞887-3
(051) 621-8288
営業時間:11~23時
  

2013年08月21日

シジミづくしランチ

この日の昼食は女性上司と2人でシジミ料理専門店へ。例の 「豪華に注文してくれる」 上司だ。この日も 「暑いからしっかり食べなきゃね」 と、シジミのピビムパッ(7,000w)を1つずつと、シジミのパジョン(10,000w)も1皿注文した。

シジミのピビムパッ(▼)は、数年前に1度だけ食べたことがある。その店の名前も偶然、この店と同じ 「섬진강」(蟾津江=ソムジンガン)だった。ソムジンガンの川の流れと海水の交わるあたりでシジミがよくとれることから、この川の名前を店名にしているシジミ料理店は少なくないようだ。


中央の赤いヤンニョムの下にシジミのむき身がたっぷり入っている。それを取り巻くように、セリやリンゴ、サンチュ、海苔など。ご飯を加えてよくかき混ぜていただく。セリの爽やかな香りがよいアクセントになってとてもおいしい。ヤンニョムは真っ赤だが辛くはない。シジミのスープもついてくる。


シジミのパジョン(▼)。こちらもシジミのむき身がたっぷり。海産物も入っていてボリュームたっぷり。


いつものおかず類(▼)。サバと大根の甘辛煮は、シジミ汁専門店なら必ずと言っていいほど出てくる定番のおかずだ。私はこれを昆布に包んで食べるのがお気に入り。左のニンニクの茎とジャコの和えものも香ばしくて非常においしい。食べ始めると止まらなくなる。


上司によるとこのお店、20年くらい前からあるそうで、はじめは建物1階の小さな食堂だったそう。メニューも今のようにいろいろあったわけではなく、シジミ汁1つだけ。だがそのおいしさが評判となって常連客が増え、店を拡張して現在は建物の2階部分で営業している。

上司曰く 「普通、建物の2階というのは食堂の立地条件としてはあまりよくないけど、この店はそのハンデがあってもいつも満員でしょ。シジミ汁がおいしいのはもちろんだけど、おかずにも手を抜かずおいしいのを提供してるのが秘訣だと思うのよね。シジミを使ったメニューも工夫していろいろ出してるし」。

なるほど。確かに店へ上がる階段の入り口は狭く、看板があるとはいえあまり目立たない場所にある。それでも食事どきにはかなりたくさんの客でにぎわうのは、やはりこの店の味を求めてやってくる人が多いということだろう。

さて、注文時から予感はあったのだが、上司は豪華に注文してくれるわりに小食で、シジミのパジョンは4分の1か5分の1ほど食べただけで 「私もうおなかいっぱいだから、たくさん食べてね」 と。ピビムパッも完食し、パジョンも2分の1くらいは食べたが、さすがの私もそれ以上はもう・・・。結局、残ったのはお持ち帰りした。


섬진강재첩국(ソムジンガンチェチョックッ)
釜山市東区水晶2洞247-28
(051) 441-3000
  

2013年07月22日

噛むほどに旨みが出るファンテクイ

この日の昼食は久しぶりに、干しスケトウダラの料理・황태구이(ファンテクイ)をいただいた。

ファンテクイは、まず干しスケトウダラを水で戻し、醤油とゴマ油を混ぜた油醤やヤンニョムを塗りつけて焼き、さらにヤンニョムジャンを塗りつけてしばらく寝かせてさらに焼く、という大変手間のかかる料理だ。江原道(カンウォンド)の江陵(カンヌン)が発祥の地だそう。

この店にはファンテ(干しスケトウダラ)を使った料理がいろいろあり、中には事前予約が必要なメニューも。手軽に食べられるファンテクイ定食(7,000w)がおすすめ。

器の中央にはさっと炒めたタマネギとエリンギ。それを取り囲むように並んでいるのがファンテクイと더덕(トドッ=ツルニンジン)。写真は4人分。


赤っぽい色をしているが全く辛くない。干しスケトウダラを戻して調理したものだが、パサパサ感はなく適度な歯ごたえがあっておいしい。噛むほどに旨みが出てくる感じだ。そのまま食べてもおいしいが、薄切り大根の酢漬けに包んで食べても美味。

おかず類も充実。



スープもファンテを使ったファンテグッ。いいダシが出ていてとてもおいしい。二日酔いのときに飲むとよいとされるスープの1つ。


とてもおいしくいただいた。ご馳走さまでした。


황태바다(ファンテパダ)
(051) 902-9666
釜山市水晶洞 水晶市場の端(水晶洞郵便局側)
  

2013年07月13日

ヒラメの刺身定食

この日のお昼は명성횟집(ミョンソンフェッチッ)へ。この店では、おでん定食や焼き魚定食を食べることが多いのだが、この日は上司の提案で회백반(フェペッパン=刺身定食)を。この日の魚は광어(クァンオ=ヒラメ)(1人分▼)。


日本では刺身といえば醤油が一般的だが、韓国では醤油以外にも食べ方はいろいろ。一番左の赤いのは、コチュジャンと酢を混ぜた초장(チョジャン)(▲)。中央はワサビと醤油、右は味噌に青唐辛子やニンニクの刻んだものを混ぜたもの。これら3種類をつけて食べたり、サンチュやエゴマの葉で包んで食べたり。

刺身にはエンガワも。


そして、たくさんのおかずと、さばいて残ったアラで作ったメウンタン(ピリ辛スープ▼)、ご飯がセットになっている。


なかなかおいしい刺身だと思ったが、上司曰く 「今日のはまあ普通ですよ。魚の熟成具合によっては、もっとおいしい日もあります」 とのこと。

ちなみにこれはいくらなのかなと、食べ終わってから値段表を見て軽く驚いた。1人12,000wだった。べらぼうに高いというわけではないが、普段、上司たちと食べに行く標準的な昼食の約2倍の値段。上司は 「たまにはいいんですよ」 と笑っていた。


명성횟집(ミョンソン/明成フェッチプ)
釜山市東区水晶2洞207-4
(新住所表記では、東区고관로128-1)
定休日:第1・3日曜日
(051) 468-8089
  

2013年07月06日

巨大サバの焼き魚定食

先日、友人ご夫婦と私たち夫婦4人で夕食をいただいた。魚が好きな方なので、家の近くの 「日式通り」 にある焼き魚の店に向かったが、なんと、少し来ない間に違う店になっていた。またしても・・・。けっこう繁盛していたのに。こういう経験は釜山ではもう数えきれないほど。

仕方がないので、近くの店を物色。最近オープンしたらしき店で、焼き魚も食べられる店があったのでそこに入ってみた。

焼き魚は고등어(サバ)か갈치(タチウオ)。どちらも10,000w。サバやタチウオの焼き魚にしては高めだなと思ったが、この値段は後で納得することになる。私たちはみなサバを注文した。定食ではなく、ご飯は別途1,000w。他にもチゲ類やウナギ焼きなどメニューは豊富。

まず例によってたくさんのおかずが運ばれてきた。チゲも1人分ずつ出てくる。



おかずをつまんでいると、かなり大ぶりのサバが2匹(2皿)登場。今年はサバやマグロが豊漁だと聞くが、かなり立派なサバだ。てっきり4人で2匹だと思って食べていると、少し遅れて、また2匹(2皿)運ばれてきた。


店のおばさんがテーブルを間違えているのかと思って、サバはもう運ばれてきたと言うと、おばさんは 「サバ、4人分でしょ? だから4皿」 と言う。この大きなサバが1人分ということだ。「これが1人分?」 と驚く私たちに 「そうですよ。たくさん食べてね」 と笑顔のおばさん。

本当に驚いた。このボリュームなら10,000wというのも納得だ。たっぷりサバを堪能した。


고갈(コガル=高渇)
釜山市水営区南川洞 「일식거리(日式通り)」 内
  

2013年07月05日

刺身をヒンヤリ食べるムルフェ

広安里(クァンアルリ)ビーチ沿いに、人気のテグタンの店 「고마 대구탕」(コマテグタン)がある。その店の2階には以前、カルビタンや焼肉の人気店 「다빈향」(タビンヒャン)があったのだが、移転したのか閉業したのか、ある日ふと 「空き店舗」 という看板が取り付けられた。商売が繁盛しているような店でも、急に店を閉じるというのは韓国ではよくあることだ。

その後、しばらく空き店舗のままだったのだが、少し前にようやく新しい店が入った。물회(ムルフェ)と숯불장어구이(炭火ウナギ焼き)の店。正確には、同じく広安里エリアの他の場所からここに移転してきた。目の覚めるような青色の看板に、店先には開店祝いの花輪がたくさん並べられ、華やかな雰囲気だ。


ムルフェは以前、済州(チェジュ)でイカのムルフェを食べたことがあった。私にとってはそれが初めてのムルフェだったが、とてもおいしかったのを覚えている。久しぶりにムルフェを食べてみようと、夫と店に入った。


店のレイアウトは、タビンヒャンの頃とほぼ同じ。この時期、大きな窓を開け放っているのでいい風が入り気持ちが良い。主なメニューはムルフェとウナギ焼きだが、他にも멍게비빔밥(ホヤのピビムパッ)、회비빔밥(刺身のピビムパッ)、우럭매운탕(クロソイのメウンタン)などいろいろある。

ムルフェも5種類(13,000~18,000w)あるが、私たちは一番スタンダードなムルフェ(13,000w)を注文した。

まず、付け合わせのおかずや、白玉団子入りのワカメスープなどが運ばれてきた。おかずの小皿には 「東風吹かば 匂ひをこせよ 梅の花・・・」 という菅原道真の短歌と梅の花が描かれていた。


この白玉団子はこちらでは새알(セアル)と呼ばれ、冬至の小豆粥にも入れる。鳥の卵という意味だ。コクがあっておいしいワカメスープだった。



やがて、主役のムルフェが登場。かなり大きな器にキュウリや梨の千切りをたっぷり入れて、その上にコチュジャンと刺身(ヒラメ)をのせ、とびこや青唐辛子のスライス、海苔をトッピング。


ムルフェといえば氷を浮かべた冷たいスープに刺身が入っているイメージがあったが、この店は器には具材だけが入っており、別途、シャーベット状のスープが運ばれてくる(▼)。これで2人分。たっぷりだ。


お玉ですくった感触としては大根おろしのような感じだが、見た目通り、ピリ辛だ。ほかのテーブルの客たちはこれをほとんど全部かけて食べていたが、刺身の下にもコチュジャンが入っているし、私たちはほどほどの量をかけていただいた。


シャリシャリのスープをかけて全体をよくかき混ぜていただく。そのまま食べてもよし、サンチュなどで包んで食べてもよし。

隣のテーブルに座った母娘らしき女性2人は、お母さん(70代くらい?)が辛いものが苦手なようで、注文時、店員さんに辛くないようにしてほしいと娘さんが頼んでいた。結局、刺身の下のコチュジャンを少し減らしてもらったようで、冷たいタレも全くかけずに食べていた。

1人でムルフェを食べている女性客もいたが、焼酎を飲みながらワイワイとムルフェを食べるおじさんのグループが多かった。

肝心の刺身の量は少なめだったが、キュウリや梨がたっぷり入っているので、かなりおなかいっぱいになった。夏にぴったりのメニューだ。お会計をすると、開店祝いとして石鹸をくれた。手作りの高級石鹸だそうだ。

名品(명품)물회
釜山市水営区南川2洞5-3 2階
(051) 755-1755
  

2013年06月25日

鍋からあふれんばかりの海の幸

先日、上司が 「たまにはフグを食べに行きましょう」 と、職場から歩いて10分弱の店に連れて行ってくれた。店の名前は 「고관해물탕」(コグァンヘムルタン)。なかなか歴史の古そうな店だ。店内も立派な木材があちこちに使われており、重厚な雰囲気をかもしだしている。2階席もあり団体客にも対応できる。

早速フグを注文しようとしたのだが、店のおばさん曰く 「うちはヘムルタンしかありません」。「おかしいな、前はフグもやってたと思ったんだけど・・・」 と不思議がる上司に、おばさんはあっさり 「ヘムルタンだけです」 と。

以前はフグもメニューにあったのか、または上司の記憶違い(?)なのか分からないが、とにかくヘムルタンしかないということなのでヘムルタン(小=40,000w)を注文。メニューは他にヘムルタン(大=55,000w)と、お酒のおつまみ的な한치회(イカ刺し)や석화회(生牡蠣)、대하구이(焼きコウライエビ)(いずれも12,000w)がある。

その名の通り、貝やカニ、エビ、イカなどの海産物がぎっしり入った鍋が運ばれてきた。中身が多すぎてフタがきっちり閉まらないくらいだ。テーブルのコンロで加熱していただく。


頃合いを見計らって店員さんが食べやすいように処理してくれる。キッチンバサミでカニの甲羅をジョキジョキ切ったり、貝の身を取り出してひと口大に切ったり、エビの身を取り出したり。目にもとまらぬ鮮やかな手さばきだ。


小皿に取り分けていただく。ややピリ辛のスープは海産物から出たいいダシが出ていてとてもおいしい。白子や魚の卵、大ぶりに切った大根や、セリなども入っている。

つけダレも出てくるが、スープと一緒に食べるのが一番おいしい気がする。付け合わせ(▼)。


一通り食べ終わったら、残ったスープにうどんを投入。これがまた美味。


そして仕上げに残ったスープでポックムパッ。これは厨房で別鍋で作って、完成したものをテーブルに運んできてくれた。海の恵みたっぷりのスープで炒めたご飯は絶品。ヘムルタンだけでなく、ナクチポックムやコプチャンチョンゴルなどを食べて、残ったスープやタレで作るポックムパッは、私が好きな韓国料理のベスト3に入る。


ヘムルタンを食べつくして大満足。おなかいっぱいになった。

さて、店名の 「고관」(コグァン=古館)という単語には、日本と関連した歴史上の由来がある。

この辺りには昔、豆毛浦(トゥモポ)倭館があった。

倭館とは、朝鮮王朝時代に日本人使節や商人が朝鮮で外交や貿易を行っていた場所。当時、朝鮮人は日本へ行って貿易することを禁止されていたため、日本人が朝鮮に来て貿易していた。朝鮮政府は港を指定して日本人の居住や商売を許可していた。

朝鮮前期には薺浦(チェポ=現・鎮海区熊川洞)と富山浦(プサンポ=現・凡一洞)、塩浦(ヨムポ=現・蔚山市塩浦洞)の3カ所に倭館があり、日本人と朝鮮人は許可を得て倭館に出入りしていた。

しかし、文禄慶長の役により倭館が閉鎖され、日本人使節はソウルへ行って朝鮮王に謁見することも禁止された。その後、日本との国交が回復し、朝鮮は1607年、釜山にのみ倭館を置き外交と貿易を許可したが、このとき建てられたのが豆毛浦倭館だ。

豆毛浦倭館は現在の東区水晶(スジョン)市場を中心に位置していた。倭館の東側は海に接しており、西・南・北川の境界には塀を築いた。倭館の東門の外には佐川(チャチョン)が流れていた。

しかし、豆毛浦倭館は敷地が狭く、また船着場の水深も浅く南風をまともに受けるため船の停泊に向いておらず、日本側は繰り返し倭館の移転を要請した。また、釜山鎮城など朝鮮の軍事施設とも近く、朝鮮側にとっても軍事機密漏洩の危険が高かった。

こうした移転の話がたびたび提起され、1678年に草梁(チョリャン)倭館が開館し、豆毛浦倭館は閉鎖された。その後、新館の草梁倭館に対し、豆毛浦倭館は古館(コグァン)・旧館(クグァン)と呼ばれるようになった。今でも 「古館入口」、「古館派出所」 など、「古館」 という地名が使われている。

「古館(コグァン)ヘムルタン」 という店名も、こうした地名に由来する。


고관해물탕(コグァンヘムルタン)
釜山市東区水晶2洞96-7
(051) 463-7585
  

2013年06月24日

35年続くフェグクス

先日、随分久しぶりに 「창녕식당」(昌寧食堂=チャンニョンシクタン)で회국수(フェグクス・4,000w)をいただいた。

昌寧出身のおばさんが수정시장(水晶市場=スジョンシジャン)内で切り盛りする小さな店で、もう35年ほどになるそうだ。フェグクスを注文するとまず、いいダシの出たすまし汁が出てくる。このおすましを一口、二口といただいていると、メインのフェグクスの登場。


茹で加減ばっちりのクポ(亀浦)ククスの上に、ワサビ粉をまぶした刺身やセリ、つぶしたニンニク、コチュジャンなどがトッピングしてある。魚はそのときの旬のものを使うので、時期によって種類はいろいろだ。全体をよく混ぜていただく。


日によってコチュジャンやワサビの量が微妙に違うようで、日によっては少し汗がにじんでくるほど辛い日もあるし、それほど辛く感じない日もある。この日はそれほど辛くなかった。ククスは見た目以上にたっぷり入っており、けっこうおなかいっぱいになる。

こちらが厨房(▼)。


客が食べるスペース(▼)。このスペースの2階にも席があり、また通路をはさんで向かい側にも同じくらいのスペースがある。


창녕식당(昌寧食堂)
釜山市東区水晶2洞12-9 7統3班
(051) 465-8298
  

2013年06月22日

ドジョウ汁

先日、医療観光コーディネーターとして活躍している友人のチョ・ミジョンさんが職場に遊びに来たので、上司と3人で昼食をご一緒した。

向かったのはチュオタン専門店「양지추어탕」(ヤンジチュオタン)。寒い時期にはよく通ったが、ここ最近はしばらく行っていなかった。久しぶりにいただくチュオタン(ドジョウ汁)だ。


山椒とつぶしたニンニク、粗く刻んだ青唐辛子を加えていただく。すりつぶしたドジョウと菜っ葉がたっぷり入っていて、相変わらずのおいしさ。おかずも充実しており、食後に出てくるスジョングァ(水正果)も楽しみの1つだ。


ミジョンさんとも久しぶりにゆっくりおしゃべり。熊本にある 「表参道吉田病院」 が先ほど釜山に釜山事務所を開いたのだが、その釜山事務所のスタッフとしても働くことになったそうだ。免疫細胞治療で有名な同病院についての問合せに応じたり、治療を希望する韓国人のガン患者を同病院に紹介するのが主な業務だそう(関連記事)。

これまで主に美容分野の医療コーディネーターとして働いてきたミジョンさん。新しい分野への挑戦となるため今はいろいろ勉強中だそうだが、これまでの経験も生かして今後もますます活躍されることだろう。

この日はミジョンさんがご馳走してくれた。ご馳走さまでした~!!


양지추어탕(ヤンジチュオタン)
釜山市東区水晶2洞550-10番地
(051)467-3924
  

2013年05月24日

春の味・カタクチイワシのスープ

この日のお昼は수미식당(秀味食堂=スミシクタン)へ。ランチタイムには日替わりの2~3種類のメニューから選ぶ。この日は春らしい시개기멸치국(シレギミョルチクッ・6,000w)がメニューにあがっていたので、上司も私もそれを注文。シレギ(大根の干葉)とミョルチ(カタクチイワシ)のスープだ。

ミョルチの生産地として釜山市機張(キジャン)郡の大辺(テビョン)港が全国的にも有名で、毎年4~5月にはミョルチ祭りが行われるほど。

メインのスープとご飯、おかずがセットで6,000w(写真は2人分▼)。


小ぶりのカタクチイワシと干葉がたっぷり入っている。身は柔らかくておいしい(▼)。


ヨモギのスープやミョルチのスープなど、季節を感じさせるメニューが並ぶのもこの店の魅力。


수미식당(秀味食堂)
釜山市水晶2洞143-1
(051) 467-9509
  

2013年05月07日

済州家のアワビ粥

故チェ・ミンシク先生の写真展 「少年時代」 を見た後、南浦洞(ナンポドン)で昼食を食べていくことにした。アワビのお粥で有名な 「제주가」(チェジュガ=済州家)。店の前は何度も通ったことがあったが、入ってみるのは初めてだった。


店の表にも店内にもメニューが日本語でも表記されている。日本人客も多いのだろう。メニューはこの通り。


夫はアワビのお粥(10,000w)を、私は옥돔구이(オクトムグイ=焼きアカアマダイ・10,000w)を注文した。注文を聞いたり料理を運んだりするのは、兄弟と思われる若い男性2人。調理を担当するおばさんは、いかにも料理のベテランといった感じだ。

キムチやカクトゥギなどはこういう容器に入って出てきて、各自、食べるだけ取り分けていただくスタイル(▼)。食べ残しがなくてよい。左上はジャコ炒め、左下は水キムチ。口の中がさっぱりする。


アワビのお粥(▼)。


アワビの肝の風味がおいしいあっさりしたお粥だ。


焼きアカアマダイ(▼)。揚げ焼きのようにしてあるので表面はカリッと香ばしく、身は適度な弾力があっておいしい。


アカアマダイといえば、2011年夏に済州島を夫と旅行したときに食べたアカアマダイもとてもおいしかった。一緒に出てきたネンクッもさっぱりとして夏にぴったりのスープだった。

焼きアカアマダイには、ウニとワカメのスープとご飯がセットになっている。



とてもおいしかったが、済州島で食べた焼きアカアマダイも同じ10,000wだったことを思うと、少しおかずが寂しい気がした。

後から入ってきた男性2人組みは常連さんのようで、メニューには書かれていない料理を食べていた。トゥッペギ(土鍋)に入った海鮮鍋のようなもの。

2階(客席ではなさそう?)に上がる階段の下のスペースでは、調理担当のおばさんが料理の下ごしらえをしていた。狭くて動きにくそうな空間だったが、おばさんにとっては慣れた空間。何のことはないといった様子で黙々と作業していた。


제주가(済州家)
釜山市中区光復洞1街5-22
(051) 246-6341
  

2013年04月29日

シジミのパジョン

この日の昼食は、同僚の方が週末も仕事が立て込んでいてお疲れ気味とのことで、その方が好きなシジミ汁のお店 「섬진강재첩국」(ソムジンガン チェチョクッ)で食べることにした。

섬진강(蟾津江=ソムジンガン)とは、全羅北道の南東部と全羅南道の北東部にかけて流れる全長212.3mの川。この川で獲れるシジミが全国的にとても有名であることから、店名に 「ソムジンガン」 を使っているシジミ汁専門店も多い。南浦洞(ナンポドン)にも1軒、「ソムジンガン」 という店がある。

お疲れ気味の同僚の方に元気を出してもらいましょうと、上司はいつものシジミ汁(6,000w)より濃い진국(チングッ・8,000w)を注文。さらに 「シジミのパジョンも頼みましょう」 とのことで、豪華なテーブルとなった。


チングッはスープの味も濃厚だし、入っているシジミの身の数も多い(▼)。いかにも身体によさそうだ。


シジミのパジョン(10,000w▼)はシジミの剥き身の他にタコやキノコ、野菜がたっぷり入っていて非常においしい。そのままでも充分おいしいが、醤油タレを少しつけて食べるとより美味。


他にも、ぶつ切りにしたサバと大根の煮付けやチヂミ、ジャコのピリ辛和えなど、いつものおいしいおかずがたっぷりで、大変おなかいっぱいになった。ご馳走さまでした。


섬진강재첩국
釜山市東区水晶2洞247-28
(051) 441-3000
  

2013年04月22日

太刀魚のチゲ

先日、女性の上司と2人での "女子ランチ” をいただく日があった。どこで食べましょうかと通りを歩いていると、「갈치찌개」(カルチチゲ=太刀魚のチゲ)と書かれたメニュー看板が目にとまり、「おいしそうですね」、「いいですね」 とその店に入ることにした。

場所は以前、気に入ってよく通っていた 「안채」(アンチェ)という食堂のすぐそば。アンチェはもう随分前に違う店に変わってしまった。あのトゥルチギが懐かしい。

早速カルチチゲ(7,000w)を注文。店内のメニューを見ると、メインのメニューは焼肉のようだ。他にも定食(プルコギ・テンジャンチゲ)やムグンジチゲ、トゥルチギなどもある。定食もおいしそうだ。またいずれ。

カルチチゲ(写真は2人分▼)。おかずは野菜中心で上品な感じ。


主役の太刀魚のチゲ(▼)調理済みのものをテーブルのコンロでクツクツ煮ながらいただく。韓国では、太刀魚の調理方法としてチゲやチョリム(ピリ辛タレの煮付け)が多い。


これくらいのサイズに切った太刀魚が4切れ(1人2切れ)入っている(▼)。ピリ辛スープと淡白な太刀魚の身は相性バツグン。


上司とは年齢も近く、気さくに話してくださるのでありがたい。社会人として、また家庭の主婦としてのおしゃべりを楽しみながらおいしくいただいた。


손맛(ソンマッ)
釜山市東区水晶2洞1-154
(051) 466-1599