2012年10月28日
金同志は空を飛ぶ
『希望の国』 に続いて、私が今年のBIFF(釜山国際映画祭)期間中に見たもう1つの作品は 『Comrade Kim Goes Flying』(金同志は空を飛ぶ)。北朝鮮・イギリス・ベルギーの3国合作の作品(81分)。北朝鮮の김광훈(キム・グァンフン)・イギリスのNicholas Bonner、ベルギーのAnja Daelemansの3人が共同で監督を務め、スタッフや登場人物は北朝鮮人だそうだ。

これまでに、北朝鮮の映画が韓国で上映されたことはあったが、北朝鮮が製作に関わった作品が上映されるのは今回が初めてとのことで、話題になっていた。今年9月20日~27日まで開催された第13回平壌国際映画祭でも上映されたのだそう。
北朝鮮の少女がサーカス団員になるのを夢見るというストーリーのラブコメディだと聞いていたが、一体どんな映画なのだろうと興味津々で劇場に向かった。この日の劇場は 「映画の殿堂」内 の小劇場。

上映時間の直前に 「急きょ、監督を舞台にお迎えすることになりました」 というアナウンスが入り、Nicholas Bonner監督(中央▼)とAnja Daelemans監督(右)が舞台に上がった。予定になかったことにざわめく観客。ニコラス・ボナー監督は 「韓国語はありません(できません)」 と韓国語で話した後、英語で挨拶。予定にはなかったことなので専用の通訳スタッフはおらず、若い女性スタッフが急きょ対応していた。

映画は81分と短いものだったが、非常によかった。田舎の炭鉱で働きながらサーカス団員にあこがれる少女・김영미(キム・ヨンミ)が、紆余曲折を経て、最後には平壌でサーカス団の団員になるといういたってシンプルなストーリーだ。
観る前からだいたいのストーリーは予想がつき、実際に観てもほぼ予想通りのストーリーだったが、これが実に面白かった。まず、キム・ヨンミ役の한정심(ハン・ジョンシム)や、空中ブランコのパートナー박장필(パク・ジャンピル)役の박충국(パク・チュングッ)など、登場人物がみな一様に実に生き生きとしていて魅力的だった。明るく純朴ですれたところがなく、見ていて気持ちがいいほどチャーミングなのだ。
後で知ったが、この映画の主な登場人物は俳優ではなく、現役のサーカス団員なのだそう。それにしては堂々とした演技で、俳優でないことが意外だと感じるほどだった。ただ皆さん北朝鮮の方なので、言葉はやはり大韓民国のものとは随分違っていて、字幕(英語)に頼る部分もけっこうあった。
ストーリーも、「夢に向かって努力して最後には成功、めでたしめでたし」 的な非常にシンプルなものだが、観ている方まで気持ちが明るくなり、爽快な気持ちになるものだった。観終わった後の “後味” も非常によかった。私は大変気に入った。映像も、ところどころアニメーションも効果的にとりいれてあって斬新な感じがした。
最近の映画は、観客が求めるからそうなのか、刺激の強い作品が多いように思うが、この作品はそういうのとは正反対で非常に新鮮だった。どの世代も安心して観て、楽しく笑える映画だ。
それもそのはず、上映後、再び舞台に上がり観客からの質問を受け付けたニコラス監督は、「暴力や性的描写、政治的主張のない、単なる楽しい映画を作りたかった」 と説明していた。「夢をあきらめないでほしいということも伝えたかった」 と。なるほど。まさにその通りの作品だった。「夢をあきらめず努力し続ければいつかは叶う」 というような話は、ともすれば押し付けがましくなりがちだが、この作品は実にさらりと爽やかだった。

また、「炭鉱の場面で、ある部分だけ他と画質が異なる部分がありましたが、何故ですか」 という観客からの問いには、「実際に撮影することができなかった場面は、既存の資料をつなげて作ったのでどうしても画質が異なってしまった」 と答えていた。
他にもたくさん質問の手が上がっていたが、この舞台挨拶も予定外であったため時間が充分に確保できず、「まだ聞きたいことがある方は、ロビーでお願いします」 と早々に退場となった。
6階のロビーに下りると、ニコラス監督は多くの観客に取り囲まれサインや記念撮影を頼まれていた。


私もどさくさにまぎれて名刺を1枚いただいた。ヨンミが描かれているかわいい名刺だ。こちらが裏面で、表面にニコラス監督の連絡先などが書かれているのだが、裏面の方がインパクトがある。

多くの人が、ジェスチャーでサインや記念撮影を頼んだり、無言で名刺をもらうばかりなので、監督は名刺を配りながら 「ところで皆さん、映画は気に入ってくれたのかな・・・」 とぽつりと笑顔で(英語で)つぶやいていたのが印象的だった。とてもチャーミングな監督だった。
それにしても、久しぶりに映画を観て心の底から楽しかったと感じた。今後も、いろんな国で上映されるといいなと思う。是非多くの人々に観てもらいたい。

これまでに、北朝鮮の映画が韓国で上映されたことはあったが、北朝鮮が製作に関わった作品が上映されるのは今回が初めてとのことで、話題になっていた。今年9月20日~27日まで開催された第13回平壌国際映画祭でも上映されたのだそう。
北朝鮮の少女がサーカス団員になるのを夢見るというストーリーのラブコメディだと聞いていたが、一体どんな映画なのだろうと興味津々で劇場に向かった。この日の劇場は 「映画の殿堂」内 の小劇場。
上映時間の直前に 「急きょ、監督を舞台にお迎えすることになりました」 というアナウンスが入り、Nicholas Bonner監督(中央▼)とAnja Daelemans監督(右)が舞台に上がった。予定になかったことにざわめく観客。ニコラス・ボナー監督は 「韓国語はありません(できません)」 と韓国語で話した後、英語で挨拶。予定にはなかったことなので専用の通訳スタッフはおらず、若い女性スタッフが急きょ対応していた。
映画は81分と短いものだったが、非常によかった。田舎の炭鉱で働きながらサーカス団員にあこがれる少女・김영미(キム・ヨンミ)が、紆余曲折を経て、最後には平壌でサーカス団の団員になるといういたってシンプルなストーリーだ。
観る前からだいたいのストーリーは予想がつき、実際に観てもほぼ予想通りのストーリーだったが、これが実に面白かった。まず、キム・ヨンミ役の한정심(ハン・ジョンシム)や、空中ブランコのパートナー박장필(パク・ジャンピル)役の박충국(パク・チュングッ)など、登場人物がみな一様に実に生き生きとしていて魅力的だった。明るく純朴ですれたところがなく、見ていて気持ちがいいほどチャーミングなのだ。
後で知ったが、この映画の主な登場人物は俳優ではなく、現役のサーカス団員なのだそう。それにしては堂々とした演技で、俳優でないことが意外だと感じるほどだった。ただ皆さん北朝鮮の方なので、言葉はやはり大韓民国のものとは随分違っていて、字幕(英語)に頼る部分もけっこうあった。
ストーリーも、「夢に向かって努力して最後には成功、めでたしめでたし」 的な非常にシンプルなものだが、観ている方まで気持ちが明るくなり、爽快な気持ちになるものだった。観終わった後の “後味” も非常によかった。私は大変気に入った。映像も、ところどころアニメーションも効果的にとりいれてあって斬新な感じがした。
最近の映画は、観客が求めるからそうなのか、刺激の強い作品が多いように思うが、この作品はそういうのとは正反対で非常に新鮮だった。どの世代も安心して観て、楽しく笑える映画だ。
それもそのはず、上映後、再び舞台に上がり観客からの質問を受け付けたニコラス監督は、「暴力や性的描写、政治的主張のない、単なる楽しい映画を作りたかった」 と説明していた。「夢をあきらめないでほしいということも伝えたかった」 と。なるほど。まさにその通りの作品だった。「夢をあきらめず努力し続ければいつかは叶う」 というような話は、ともすれば押し付けがましくなりがちだが、この作品は実にさらりと爽やかだった。
また、「炭鉱の場面で、ある部分だけ他と画質が異なる部分がありましたが、何故ですか」 という観客からの問いには、「実際に撮影することができなかった場面は、既存の資料をつなげて作ったのでどうしても画質が異なってしまった」 と答えていた。
他にもたくさん質問の手が上がっていたが、この舞台挨拶も予定外であったため時間が充分に確保できず、「まだ聞きたいことがある方は、ロビーでお願いします」 と早々に退場となった。
6階のロビーに下りると、ニコラス監督は多くの観客に取り囲まれサインや記念撮影を頼まれていた。


私もどさくさにまぎれて名刺を1枚いただいた。ヨンミが描かれているかわいい名刺だ。こちらが裏面で、表面にニコラス監督の連絡先などが書かれているのだが、裏面の方がインパクトがある。
多くの人が、ジェスチャーでサインや記念撮影を頼んだり、無言で名刺をもらうばかりなので、監督は名刺を配りながら 「ところで皆さん、映画は気に入ってくれたのかな・・・」 とぽつりと笑顔で(英語で)つぶやいていたのが印象的だった。とてもチャーミングな監督だった。
それにしても、久しぶりに映画を観て心の底から楽しかったと感じた。今後も、いろんな国で上映されるといいなと思う。是非多くの人々に観てもらいたい。
Posted by dilbelau at 09:27│Comments(0)
│釜山国際映画祭