2010年10月05日

国宝・石窟庵

つづき

たくさんの修学旅行生たちに混じって、私たちも石窟庵への道を歩く。釜山より数度気温が低いようで、肌寒いと感じるほどだ。山の緑が非常に爽やかで気持ちよい。

これまた通訳ガイドさんが教えてくれたことだが、韓国には杉やヒノキの木が少なく代わりに松の木が多い。韓国は岩盤の土地が多いため、杉やヒノキは根をうまく張れず育たないのだそうだ。対して松は根を横方向に張るため、岩盤の土地でもよく育つのだそうだ。そのため杉・ヒノキが原因の花粉症は、韓国では少ないのだそうだ。

やがて、目指す石窟庵(写真左奥▼)が見えてきた。修学旅行生たちが、記念写真を撮っている。

国宝・石窟庵

このあたりから振り返って見ると、遠くに慶州の街並みを眺めることができる(▼)。慶州は盆地なので、夏はかなり暑いのだそうだ。遠くの山々の向こうには、東海(日本海)が広がっているそうで、絶好の日の出スポットだとのこと。ここから海まで道が続いており、車で20分ほど行けば海だそうだ。

国宝・石窟庵

石窟庵の石窟は国宝第24号に指定されている。案内書によると、石窟庵は新羅時代の景徳王10年(751年)、当時の宰相の金大城によって創建され、当初は 「石仏寺」 と呼ばれていたそうだ。

石窟は前方が四角く、後方はドーム上に丸くなっており、本尊仏(▼)を中心として周囲に天部像・菩薩像・羅漢像・居士像・四天王像・仁王像(金剛力士像)・八部神衆像などが彫刻されている。

石窟庵はインドや中国の石窟寺院と違って、花崗岩で造られている。1995年に仏国寺と共にユネスコ世界文化遺産に指定されたそうだ。内部は撮影禁止なので、写真を拝借。こちらが石窟庵本尊仏(▼)。

国宝・石窟庵

世界の宗教芸術史上、傑出した作品として知られているこの本尊仏は、世界で ”最も平和な顔” とも表現されるほど、穏やかな表情を見せている。ちょうど私たちが見学しているとき、本尊仏の前では1人のお坊さんと数人の中年女性が祈祷している最中だった。

その中年女性たちは、韓国で毎年11月中旬の木曜日に行われる 「大学修学能力試験」、通称 「修能(수능=スヌン)」 を控えた高校3年生のお母さんたちだ。ここで大学入試のための祈祷をしているのだ。今年のスヌンは11月18日。もともとは11月11日に予定されていたのだが、同日ソウルで主要20カ国・地域(G20)首脳会議が開催されるため、1週間延期されたのだ。

息子や娘のために、一心不乱に祈祷している母親の姿は何度見ても印象的だ。

祈祷といえば、韓国でも日本と同じように기와(瓦)に願い事を書いて寄進する習慣がある。この石窟庵の瓦寄進は1枚10,000w。時期的に、受験生が希望大学に入学できますようにと書く母親たちも多いだろう。

国宝・石窟庵

中には何語か分からない、見たことのないような文字で願い事が書かれている瓦もあった。

国宝・石窟庵

石窟庵の建物(写真左▼)の手前の部分(瓦屋根の部分)は最初からあったものではなく、後から造りつけられたものだそう。建物奥の方の屋根の部分が丸くお皿を伏せたような形になっているが、内部ではそれがドーム上になっている部分だ。

石窟庵は造られてからしばらく、人々から忘れ去られていたそうだ。それを最近になって、この辺りを通っていて雨に遭った人が、雨宿りの場所を探していて偶然発見したのだそうだ。

国宝・石窟庵

さて、石窟庵を後にした私たちは、불국사(仏国寺)へと向かった。

つづく


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