2010年10月06日

昔々の空気がそのままに

つづき

おいしいプルコギをいただいた私たちが次に向かったのは、古墳公園(別名 「大陵園」)。200基ほどあるとされる慶州市内の古墳のうち、古墳公園の12~13万坪の広々とした敷地内には23基の古墳が並んでいるそうだ。

入場料大人1,500wを払って公園内に入ると、緑あふれる静かな空間・・・と思いきや、幼稚園から小・中学生ぐらいの子供の団体があちらにもこちらにも。

昔々の空気がそのままに

子供たちがわいわいおしゃべりする声、引率の先生の声などなど、公園内はなかなか賑やかだ。

さて、ガイドさんの説明を聞きながら園内を進んでいくと、やがて2つの古墳が重なり合うようになっている古墳が目に入る。「皇南大塚」 という瓢形古墳だ。

昔々の空気がそのままに

「皇南大塚」 は夫婦の古墳。手前のこんもりした部分が男性、奥が女性の古墳だそうだ。古墳の手前の池や、1本ずつすくっと立っている木々がこの古墳を見守っているようだ。

昔々の空気がそのままに

さらに奥に進むと、古墳公園の中で一番有名な 「天馬塚」 へ。(写真は天馬塚を横から見たところ(▼))

昔々の空気がそのままに

さてこの古墳公園、昔から公園として整備されていたわけではなかったそうだ。古墳群は昔からあったが、家や田んぼもあって、古墳と人々が同居していたような場所だったそう。それを文化財保護のため、このあたりに住んでいた人たちに立ち退いてもらって、今のような大規模な公園を整備したのだそうだ。

今から30年ほど前 「皇南大塚」 を発掘してみようということになり、それに先立って発掘の予行演習のような感じで、現在 「天馬塚」 と呼ばれている古墳の発掘が1973年の4~12月に行われたそうだ。

すると、「天馬塚」 という名前の由来でもある、天馬を描いた馬の泥よけや、金冠や腰帯など1万1500点余りの副葬品が出土し、当時世間を驚かせたそうだ。このとき、5~6世紀にかけての新羅の大型封土墳の内部が初めて明らかになり、大きな話題になったそうだ。

その「天馬塚」 は古墳公園内では唯一、内部を一般公開(撮影禁止) している。

昔々の空気がそのままに

外から見ても大きいが、内部の空間もかなり広い。たくさんの石を積んで半球形のドームを作り、その上を粘土層の土で塗り固め、表面には芝が植えられているのだが、これらの断面図が実際に目で見られるようにしてある。

石は、内部のドーム上の空間を保ちながら積んでいかねばならないので、バランスをとるのが非常に難しい。なので、1つでも石を抜き取ってしまうと全体のバランスが崩れ、崩壊してしまう。封土墳なので入り口もなく、中に入ろうにも石を抜くと崩れてしまうので、盗掘できないようになっているのだそうだ。また粘土層の土で覆ってあるため、雨水も一切しみこまないのだそうだ。

「天馬塚」 の内部には、出土した多数の副葬品が展示されてある。金の冠や腰帯、腕輪、勾玉などの装飾品や、現代で言うやかんやアイロンなどの生活道具など、さまざまだ。中でも金冠は重さが2キロもあるそうで、日常的に着用するにはあまりに重過ぎるということで、死後作られたものではないかと言われているそうだ。

また、この古墳に埋葬されていた人物が誰なのかは、判明していない。そのため人物の名前の代わりに、出土品の中の天馬の絵が描かれた馬の泥除け(白樺の樹皮で作られている)から 「天馬塚」 という名前をつけたそうだ。

「天馬塚」 の中央には、この古墳の主である人物の木棺内部がどのようになっていたかも展示されている。木の部分は朽ちてしまっているが、金などはそのまま残っている。

「天馬塚」 の発掘に続いて1973~75年に 「皇南大塚」 の古墳も発掘され、こちらも埋葬されていた人物が誰なのかは判明していないが、副葬品などから王と王妃だろうとされているそうだ。

他の古墳も発掘すれば、また様々な遺品が出てくるのだろうが、長い年月、石と粘土層の土とで完全に塗り固められていた空間を開けると、内部のものが外の空気に触れて酸化したりするため、文化財の保護としては今のまま発掘しない状態で保存するのが一番なんですけどね、とガイドさん。

今も未発掘の古墳内部には、千数百年ものはるか昔の新羅時代の空気がそのまま封じ込められているのかと思うと、何だか不思議な気がした。

つづく


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この記事へのコメント
懐かしいですね。。。
17年前に初めて行った場所。
懐かしくなって、厳選した写真を挟んでインドネシアに持ってきているアルバムを見ました。

慶州旅行の懐かしさに浸るというより、髪の毛が豊富にあり、頬がこけているイケメンの自分を見て自身の変貌に驚いてしまいました。

そんな若き時代に回帰するためにも、また行きたいですね。
Posted by ジャカルタ駐在員ジャカルタ駐在員 at 2010年10月07日 03:14
ジャカルタ駐在員 さま

読んでいて途中でふきだしてしまいました(笑)。特に 「豊富にあり」 の表現がおかしくて・・・。
新羅時代の古墳同様、誰もが写真の中では遠い昔のままですね。
Posted by dilbelaudilbelau at 2010年10月07日 09:31
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