2012年12月25日

水先案内人 5

つづき

日が沈んだ後の海をぼんやり眺めていると、小型船がニューかめりあ号に向かって進んできているのに気がついた。こちらに向かってまっすぐ進んでくる。何だろうと思って見ていると、船体には 「PILOT」 という文字が見え、船の中ほどには赤と白の旗が、船尾には太極旗が立てられていた。

水先案内人 5

やがてその船の船体とニューかめりあ号の船体が接し、誰かがニューかめりあ号に乗り移ってきたのが見えた。その後、「PILOT」 と書かれた船はニューかめりあ号から離れていった。

水先案内人 5

後で調べてみたらこの船は 「パイロット艇」 で、乗り込んできた人は 「パイロット」(水先人/ 水先案内人)だったようだ。パイロットとは 「多数の船舶が行き交う港や海峡、内海において、それらの環境に精通することが困難な外航船や内航船の船長を補助し、船舶を安全かつ効率的に導く専門家」 だそう。この場合は、船舶を安全に着岸させるよう、船長を補助する業務を行っていたということだろう。

「水先案内人」 という言葉は聞いたことはあっても、実際に職業としての水先案内人の存在を目の前で確認したのは初めて。あれが水先案内人なのかとちょっと感動した。水先案内人になるには相当な時間と経験が必要だそうで、2011年には日本初の女性水先案内人が誕生したそうだ。

さて、そろそろ下船時間も近づいてきたので部屋に戻ってみると、先ほど 「行きの船でも同じでしたね」 と声をかけてくれたおばさんが布団で横になっていた。目で挨拶を交わしたが、先ほどの明るい表情はなく元気もない。近寄ると 「船酔いしちゃって」 と言うのが精一杯。

行きよりはマシだったとはいえ、確かに途中、少し揺れていた。

見ると、部屋にいた他の人たちも軒並み横になっていた。中にはペーパーバッグを枕元に置いて、時折起きあがってはペーパーバッグを持って苦しそうにしている人も。皆さん船酔いだ。

行きも同じ部屋だったおばさんに、エントランスフロアまで荷物を下ろすのを手伝いましょうと言うと、「港に近づいて少しマシになったから、自分でも下ろせるような気がするけど・・・。じゃあ、せっかくだから一緒に帰りましょう」 ということになった。

港に近づいて船の揺れもなくなり、気持ち悪さもおさまってきたとのことで、また人なつこい笑顔が戻ってきた。下船し、一緒に地下鉄の駅まで歩きながらいろいろおしゃべり。子育てもひと段落し、ただ家にいるよりは何か習い事でもしようと始めた日本語の勉強が長く続き、こうして通訳案内士の試験を受けるまでになったそうだ。

地下鉄の中で、いろいろおしゃべりしたり連絡先を交換したりしているうちに、私の乗り換え駅が近づいてきた。「パン食べますか?日本はパンがおいしいから、買ってきたんです。どれでも好きなの持って帰ってください」 と、いろいろな種類のパンが入った袋を開けて差し出す。

家で待つご主人や娘さんに食べさせたくて買ってきたパンだろうに、私がいただくのは申し訳なかったが、「こうして知り合ったんだし、私からの気持ちということで」 とおっしゃるので、ありがたく1ついただいた。

通訳案内士の試験結果が出るのは2月ごろだそう。いい結果が出ますように。

同じ船に乗り合わせなければ知り合うこともなかったかもしれない人との出会いも、旅の醍醐味だとあらためて感じた。


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