2013年06月25日

鍋からあふれんばかりの海の幸

先日、上司が 「たまにはフグを食べに行きましょう」 と、職場から歩いて10分弱の店に連れて行ってくれた。店の名前は 「고관해물탕」(コグァンヘムルタン)。なかなか歴史の古そうな店だ。店内も立派な木材があちこちに使われており、重厚な雰囲気をかもしだしている。2階席もあり団体客にも対応できる。

早速フグを注文しようとしたのだが、店のおばさん曰く 「うちはヘムルタンしかありません」。「おかしいな、前はフグもやってたと思ったんだけど・・・」 と不思議がる上司に、おばさんはあっさり 「ヘムルタンだけです」 と。

以前はフグもメニューにあったのか、または上司の記憶違い(?)なのか分からないが、とにかくヘムルタンしかないということなのでヘムルタン(小=40,000w)を注文。メニューは他にヘムルタン(大=55,000w)と、お酒のおつまみ的な한치회(イカ刺し)や석화회(生牡蠣)、대하구이(焼きコウライエビ)(いずれも12,000w)がある。

その名の通り、貝やカニ、エビ、イカなどの海産物がぎっしり入った鍋が運ばれてきた。中身が多すぎてフタがきっちり閉まらないくらいだ。テーブルのコンロで加熱していただく。

鍋からあふれんばかりの海の幸

頃合いを見計らって店員さんが食べやすいように処理してくれる。キッチンバサミでカニの甲羅をジョキジョキ切ったり、貝の身を取り出してひと口大に切ったり、エビの身を取り出したり。目にもとまらぬ鮮やかな手さばきだ。

鍋からあふれんばかりの海の幸

小皿に取り分けていただく。ややピリ辛のスープは海産物から出たいいダシが出ていてとてもおいしい。白子や魚の卵、大ぶりに切った大根や、セリなども入っている。

つけダレも出てくるが、スープと一緒に食べるのが一番おいしい気がする。付け合わせ(▼)。

鍋からあふれんばかりの海の幸

一通り食べ終わったら、残ったスープにうどんを投入。これがまた美味。

鍋からあふれんばかりの海の幸

そして仕上げに残ったスープでポックムパッ。これは厨房で別鍋で作って、完成したものをテーブルに運んできてくれた。海の恵みたっぷりのスープで炒めたご飯は絶品。ヘムルタンだけでなく、ナクチポックムやコプチャンチョンゴルなどを食べて、残ったスープやタレで作るポックムパッは、私が好きな韓国料理のベスト3に入る。

鍋からあふれんばかりの海の幸

ヘムルタンを食べつくして大満足。おなかいっぱいになった。

さて、店名の 「고관」(コグァン=古館)という単語には、日本と関連した歴史上の由来がある。

この辺りには昔、豆毛浦(トゥモポ)倭館があった。

倭館とは、朝鮮王朝時代に日本人使節や商人が朝鮮で外交や貿易を行っていた場所。当時、朝鮮人は日本へ行って貿易することを禁止されていたため、日本人が朝鮮に来て貿易していた。朝鮮政府は港を指定して日本人の居住や商売を許可していた。

朝鮮前期には薺浦(チェポ=現・鎮海区熊川洞)と富山浦(プサンポ=現・凡一洞)、塩浦(ヨムポ=現・蔚山市塩浦洞)の3カ所に倭館があり、日本人と朝鮮人は許可を得て倭館に出入りしていた。

しかし、文禄慶長の役により倭館が閉鎖され、日本人使節はソウルへ行って朝鮮王に謁見することも禁止された。その後、日本との国交が回復し、朝鮮は1607年、釜山にのみ倭館を置き外交と貿易を許可したが、このとき建てられたのが豆毛浦倭館だ。

豆毛浦倭館は現在の東区水晶(スジョン)市場を中心に位置していた。倭館の東側は海に接しており、西・南・北川の境界には塀を築いた。倭館の東門の外には佐川(チャチョン)が流れていた。

しかし、豆毛浦倭館は敷地が狭く、また船着場の水深も浅く南風をまともに受けるため船の停泊に向いておらず、日本側は繰り返し倭館の移転を要請した。また、釜山鎮城など朝鮮の軍事施設とも近く、朝鮮側にとっても軍事機密漏洩の危険が高かった。

こうした移転の話がたびたび提起され、1678年に草梁(チョリャン)倭館が開館し、豆毛浦倭館は閉鎖された。その後、新館の草梁倭館に対し、豆毛浦倭館は古館(コグァン)・旧館(クグァン)と呼ばれるようになった。今でも 「古館入口」、「古館派出所」 など、「古館」 という地名が使われている。

「古館(コグァン)ヘムルタン」 という店名も、こうした地名に由来する。

鍋からあふれんばかりの海の幸

고관해물탕(コグァンヘムルタン)
釜山市東区水晶2洞96-7
(051) 463-7585


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