2012年03月06日

임응식と韓国現代美術展

釜山市立美術館で、写真作家임응식(イム・ウンシク=1912~2001)氏の生誕100周年を記念し、『임응식과 한국현대미술전』(イム・ウンシクと韓国現代美術展)が2月29日から開かれている。4月15日まで。

イム・ウンシク氏は、「きれいな絵」 というレベルでしかなかった韓国の写真を、独自の芸術の領域へと発展させた人物として知られている。韓国の現代写真の先駆者だ。同じく写真作家の정인성(チョン・インソン=1911~1996)氏とともに、「生活主義の写真」 を率いた。

同展では1930年代~1980年代の人物写真まで、約150点の作品を展示する。初期の芸術写真から、彼の名が世に知られることになる生活主義の写真、さらには文化芸術人の姿をおさめた 「韓国の芸術人」 シリーズなど、白黒写真の真髄を鑑賞できる。イム氏の長男・イム・ボムテック氏(75・現代写真研究所所長)は 「ソウルでの展示に続いて、父の故郷・釜山でも展示されることになりありがたい。感慨無量だ」 と話す。

展示作品は1~4部から成る。

1部は 『記録の芸術、芸術の記録』 というテーマで、イム氏の初期の作品から60年代までの芸術写真を展示する。1946年作の 『아침』(朝)は、腰までの長いお下げ髪に綿布チマチョゴリ姿の3人の女性が、たくさんの花を入れたカゴを頭に載せて歩いて行く姿を写したもの。牧歌的な田舎の風景と女性、子供の様子を、温かい視線で切り取った彼の草創期の芸術写真の特徴がよく表れている(▼)。

임응식と韓国現代美術展

時代の苦悩や物事の裏側を描いた作品も多い。『전쟁고아』(戦争孤児)(1951年作)のように、現代史の断面を描いた作品もある。ソウル・明洞(ミョンドン)の미도파(ミドパ=美都波)百貨店前で失業者を撮った彼の代表作 『구직』(求職)(1953)も展示されている。『핫팬츠』(ホットパンツ)(1971)は、伝統と現代が交差する風俗の変貌を描く。

イム・ウンシク氏は、釜山の初期写真史を述べるにあたって外すことはできない。2部 『イム・ウンシクと釜山』 では、1945年の解放以降から1952年の韓国写真作家協会創立前まで、彼が主に活動してきた釜山地域を中心に、彼の初期作品と、彼とともに活動してきたチョン・インソンなど、釜山地域の写真家らの作品が展示されている。

3部 『イム・ウンシクと人々』 では、1969年、彼が建築雑誌 『공간』(空間)の主幹となり、新しく始まった連載にのせるために撮った芸術人の人物、作業写真などが展示してある。ジャン・ウッジン、チョン・ギョンサ画伯、詩人ジョ・ジョンジュ、小説家オ・サンスンの人物写真も展示されている。人物に対する愛情は、ともすれば乾燥しがちな彼の写真に温かみを加えた。

写真と絵のタッグもある。4部 『イム・ウンシクと韓国現代美術、画家の顔』 は、彼が生前交流を深めていた美術人との関係に焦点を当てている。画家の顔と、その画家が描いた絵を同時に鑑賞できる。例えば、イム・ウンシクが撮ったパク・ヨンソン画家の顔写真の横に、パク作家の作品 『농부의 가족』(農夫の家族)が展示されている。

ちょうど、古隠(コウン)写真美術館の新館では、イム・ウンシクと双璧をなす同時代の作家チョン・インソンの写真の展示 『정인성, 부산 사진의 여명 전』(チョン・インソン、釜山の写真の黎明展)が開かれている(3月18日まで)。

* イム・ウンシクと韓国現代美術展=4月15日まで、釜山市立美術館2階大展示室(051-744-2602 / 740-4256)

記事・写真=釜山日報(3月5日21面より)


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