2012年02月03日

『折れた矢』

第2の 『도가니(トガニ)』 とも評される話題作 『부러진 화살(折れた矢)』 を観た。정지영(チョン・ジヨン)監督、안성기(アン・ソンギ)主演の作品だ。

『折れた矢』

製作費5億ウォン以下で作られたことで知られるこの映画は2月8日に公開され、公開9日目の同26日、全国460のスクリーンで8億3270wの興行収入を記録したそう。累積売上額は88億523万6000w。同じく26日には累積観客数115万6758人を記録したそうだ。

『トガニ』 同様、実話をもとに作られた映画。アン・ソンギ演じる김명호(金明浩=キム・ミョンホ)元 成均館大教授(55)が、同大学の入試(1995年度)の数学の問題に不備があったことを指摘。不備を公表し公正な対応をすべきだと主張したことで大学側から疎まれ、大学から再任用を拒否され教授としての職を失ったことが事の発端。それを不当とし大学側を相手に裁判を起こすが、キム元教授の訴えは棄却され敗訴した。

その裁判を担当したのはパク判事。裁判で不当な判決を下されたと腹を立てたキム元教授は、公正な裁判をするようにと脅すつもりでボーガンを持ってパク判事の自宅アパート前を訪れた。2007年の 「석궁사건(石弓事件)」 だ。

キム元教授は 「ボーガンを持って行ったのは事実だが、実際に矢を放ってはいない。矢は偶発的に発射されたものだ」 と主張。しかしパク判事はキム元教授に撃たれたと主張。着ていた下着には血の跡、そして腹部には長さ2センチ程度の傷。両者の主張は真っ向から対立。キム元教授は被告人として公判を受けることになり、彼を弁護するのが박원상(パク・ウォンサン)演じる弁護士。

弁護士は事件当時、現場で折れ曲がった矢が目撃されているが、その後その矢は行方不明になったこと、さらに下着とベストには血が付着しているのに、その2枚の間に着ていたワイシャツに血が付着していないことに注目。実際には発射された矢はアパートの壁に当たって折れ曲がったのではないか、パク判事は矢を使って自ら腹部に傷をつけたのではないかと疑い、実験もしてみる。

しかし、結局最高裁まで上告したが棄却され、キム元教授は最高裁から懲役4年の刑を宣告され収監される。

裁判のシーンでは、「まず結論ありき」 的に、弁護士やキム元教授の主張や要求がことごとく棄却される。実際にはあり得ないだろうというほど、むちゃくちゃな展開だ。実話をもとにはしているがノンフィクションではないので、そのあたりは演出もかなり加わっているのだろう。

しかし程度の差こそあれ、現実の韓国の司法界にも不正がまかり通っているのだろうということは、この映画の反響の大きさからも見て取れる。そういう不正を世の中に訴えるという意味では、まさに 『トガニ』 と同じ社会的映画だ。

裁判の場面を見ていると、こちらまで腹が立ってくる。ただ 『トガニ』 より救いがあると感じたのは、この事件に関連して誰かの命が犠牲になったりはしていないという点と、キム元教授が2011年1月24日刑期満了して出所したという点。

司法界の不当性を訴えるという点では、大変大きな波紋を投げかけた映画だ。

ただ少しひっかかるのは、キム元教授がボーガンという “凶器” を持ってアパートを訪れていたこと。偶発的に矢が発射されアパートの壁に当たって折れた、というのが弁護士の見解だ。だがもし、偶発的に発射された矢がパク判事に命中していたら、それこそケガだけでは済まなかったかもしれない。一つ間違えば殺人事件になっていたという事態の重大性については、映画の中では焦点が当てられていなかったのが少しひっかかった。

それにしてもこの映画の反響はかなり大きい。この日は新世界百貨店センタムシティ内のシネコン 「CGV」 で観たのだが、客席はかなり埋まっていた。早朝割引料金(5,000w)で観ようと、この日最初の上映回(9:40)を利用したのだが、早い時間帯にもかかわらず本当に大勢の客が観に来ていて驚いた。


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