2011年10月25日
映画 『도가니』(るつぼ)
9月22日の公開後わずか5日間で観客動員数100万人を、3週間で400万人を突破し、韓国で大きな話題となっている映画 「도가니(トガニ)」(るつぼ)を、先日観に行った。

光州に実在する聴覚障害児のための特殊学校 「광주인화학교」(光州仁和学校) で2000~2005年まで、児童に対し常習的に行われていた虐待・性的暴力事件を扱った映画だ。
原作は공지영(コン・ジヨン)氏という女性作家の同名長編小説(▼)で、出版された2009年当時もその衝撃的な内容に反響が大きかったそうだ。

しかしこのたび映画化したことで、より多くの人の目に触れ、事件が大勢の人々に知られることになった。映画が公開された当初は、テレビニュースでも連日大きく取り上げられていた。
事件は2005年6月に被害者児童の母親が告発したことで明るみに出た。児童9人に対し性的暴力を加えた嫌疑で、学校の職員(校長、行政室長、教師など)6人を被告とした裁判も起こされたが(2007年)、下された判決は 「実刑2人、執行猶予2人、控訴棄却・不起訴2人」 という信じがたいものだったそうだ。
校長に対しては懲役5年が求刑されたが、控訴審で懲役2年6ヶ月執行猶予3年という判決が下される。1年服役したのち出所、その後ガンのため死亡。
行政室長は嫌疑を認めたが、公訴時効を過ぎたため実刑はなく損害賠償2000万ウォンを支払うという判決。また教師に対しては懲役10ヶ月が求刑されるが、公訴権が満了したため実刑は執行されてない。
映画 「도가니」 が公開されたことにより、当時の事件を再捜査し裁判をやり直すべきだという声や、この 「光州仁和学校」 以外の学校でも少なからず行われていると言われる障害者児童に対する性的暴力・虐待を、徹底的に調査すべきだという声が高まり、デモも行われていた。
施設名も実名を出したいわば告発本を書くのは勇気がいった思うが、その性質上外部との接触が少なく閉鎖された特殊学校内の実状を、より多くの人に知ってもらいたかったという作者の意図は、映画化によってより具現化されたわけだ。
児童役を演じるのは当然未成年の子供。虐待や性的暴力シーンの撮影にあたりどういう表現・演技までは許せるか、児童役の子供の保護者に立ち会ってもらい許可を得ながら撮影したのだそうだ。
土曜日の夕方。映画館の座席は7割ぐらい埋まっていただろうか。次第に、観ている人々の激しい憤怒が館内に充満してくるのが感じられる。決してあってはならないことがまかり通っている。だいたいのあらすじを知った上で観ていても、やり場のない怒りや悲しみのため、握ったこぶしに思わず力が入る。
敬虔なクリスチャンの仮面をかぶった人非人が、裁判で執行猶予がついたときに見せたあの薄ら笑い。これは映画のワンシーンだと分かっていても、ぶん殴ってやりたいほどだ。はらわたが煮えくり返るとはまさにこのこと。
しかしもっとやりきれないのは、これが映画の中だけの話ではなく、今も現実にいろいろな施設で起こっていることだという事実。
この映画を1人でも多くの人が観て、こういうことが実際にまかり通っているのだという現実を認識することが、間接的にではあるが流れを変えていく一歩になるのではないかと思う。これ以上同じような地獄を味わう子どもたちが増えないように。
光州市教育庁は現在 「光州仁和学校」 の監査を進行中で、問題点があれば特殊教育委託機関を取り消して廃校にする方針だ。事件当事者には相応の罰を科し、社会的な体質も変えていってほしいと切に願う。

光州に実在する聴覚障害児のための特殊学校 「광주인화학교」(光州仁和学校) で2000~2005年まで、児童に対し常習的に行われていた虐待・性的暴力事件を扱った映画だ。
原作は공지영(コン・ジヨン)氏という女性作家の同名長編小説(▼)で、出版された2009年当時もその衝撃的な内容に反響が大きかったそうだ。

しかしこのたび映画化したことで、より多くの人の目に触れ、事件が大勢の人々に知られることになった。映画が公開された当初は、テレビニュースでも連日大きく取り上げられていた。
事件は2005年6月に被害者児童の母親が告発したことで明るみに出た。児童9人に対し性的暴力を加えた嫌疑で、学校の職員(校長、行政室長、教師など)6人を被告とした裁判も起こされたが(2007年)、下された判決は 「実刑2人、執行猶予2人、控訴棄却・不起訴2人」 という信じがたいものだったそうだ。
校長に対しては懲役5年が求刑されたが、控訴審で懲役2年6ヶ月執行猶予3年という判決が下される。1年服役したのち出所、その後ガンのため死亡。
行政室長は嫌疑を認めたが、公訴時効を過ぎたため実刑はなく損害賠償2000万ウォンを支払うという判決。また教師に対しては懲役10ヶ月が求刑されるが、公訴権が満了したため実刑は執行されてない。
映画 「도가니」 が公開されたことにより、当時の事件を再捜査し裁判をやり直すべきだという声や、この 「光州仁和学校」 以外の学校でも少なからず行われていると言われる障害者児童に対する性的暴力・虐待を、徹底的に調査すべきだという声が高まり、デモも行われていた。
施設名も実名を出したいわば告発本を書くのは勇気がいった思うが、その性質上外部との接触が少なく閉鎖された特殊学校内の実状を、より多くの人に知ってもらいたかったという作者の意図は、映画化によってより具現化されたわけだ。
児童役を演じるのは当然未成年の子供。虐待や性的暴力シーンの撮影にあたりどういう表現・演技までは許せるか、児童役の子供の保護者に立ち会ってもらい許可を得ながら撮影したのだそうだ。
土曜日の夕方。映画館の座席は7割ぐらい埋まっていただろうか。次第に、観ている人々の激しい憤怒が館内に充満してくるのが感じられる。決してあってはならないことがまかり通っている。だいたいのあらすじを知った上で観ていても、やり場のない怒りや悲しみのため、握ったこぶしに思わず力が入る。
敬虔なクリスチャンの仮面をかぶった人非人が、裁判で執行猶予がついたときに見せたあの薄ら笑い。これは映画のワンシーンだと分かっていても、ぶん殴ってやりたいほどだ。はらわたが煮えくり返るとはまさにこのこと。
しかしもっとやりきれないのは、これが映画の中だけの話ではなく、今も現実にいろいろな施設で起こっていることだという事実。
この映画を1人でも多くの人が観て、こういうことが実際にまかり通っているのだという現実を認識することが、間接的にではあるが流れを変えていく一歩になるのではないかと思う。これ以上同じような地獄を味わう子どもたちが増えないように。
光州市教育庁は現在 「光州仁和学校」 の監査を進行中で、問題点があれば特殊教育委託機関を取り消して廃校にする方針だ。事件当事者には相応の罰を科し、社会的な体質も変えていってほしいと切に願う。
Posted by dilbelau at 09:00│Comments(2)
│文化・芸術・エンタメ
この記事へのコメント
こんにちは♪
あれから ソウルに戻ってから観ましたが
勿論 許されない事ばかりで気持ちが治まりませんでしたね。
言葉に出して訴えられない子供たちをおもちゃの様に・・・
自分の欲望の相手にした罪を 罰する事が出来なかった事も
後まで尾を引きました・・・やるせなくて、辛くて、怒りのやり場に困りましたね
でも ココだけでは無いのかも~と思ったのは私だけではないでしょう 表に出てこない事が沢山あるのでは?
あらゆる施設での虐待は考えられますのも!
何故か 早朝1番に観てしまったものですからかなり落ち込んで
気持ちを建て直すのに時間が掛かりました。
あれから ソウルに戻ってから観ましたが
勿論 許されない事ばかりで気持ちが治まりませんでしたね。
言葉に出して訴えられない子供たちをおもちゃの様に・・・
自分の欲望の相手にした罪を 罰する事が出来なかった事も
後まで尾を引きました・・・やるせなくて、辛くて、怒りのやり場に困りましたね
でも ココだけでは無いのかも~と思ったのは私だけではないでしょう 表に出てこない事が沢山あるのでは?
あらゆる施設での虐待は考えられますのも!
何故か 早朝1番に観てしまったものですからかなり落ち込んで
気持ちを建て直すのに時間が掛かりました。
Posted by yokotan at 2011年10月25日 11:36
yokotan さま
本当にやりきれない映画でした。
ここ(光州仁和学校)だけでないことは間違いないようですよ。
年々、障害者に対する性暴力や虐待の件数が増え続けていると、先日ニュースでも報道していました。
「性暴力から自分の身を守るにはどうすればよいか」ということを、ある団体が子供向けに分かりやすく、無料で出張教育しているそうです。障害者用の学校などに出向いて、人形劇などで指導するようですが、中には来てくれるなと拒否する学校もあるとのこと。その団体の代表者は、「拒否する学校には疑いの目を向けてしまいます」とも言ってました。
先日は幼稚園(保育園だったかな)の先生が、園児に暴力をふるっている様子が監視カメラに捉えられており、それもニュースになっていました。
ほんとに・・・。言葉が出ませんね。
本当にやりきれない映画でした。
ここ(光州仁和学校)だけでないことは間違いないようですよ。
年々、障害者に対する性暴力や虐待の件数が増え続けていると、先日ニュースでも報道していました。
「性暴力から自分の身を守るにはどうすればよいか」ということを、ある団体が子供向けに分かりやすく、無料で出張教育しているそうです。障害者用の学校などに出向いて、人形劇などで指導するようですが、中には来てくれるなと拒否する学校もあるとのこと。その団体の代表者は、「拒否する学校には疑いの目を向けてしまいます」とも言ってました。
先日は幼稚園(保育園だったかな)の先生が、園児に暴力をふるっている様子が監視カメラに捉えられており、それもニュースになっていました。
ほんとに・・・。言葉が出ませんね。
Posted by dilbelau
at 2011年10月25日 15:39
