2012年01月24日
旅行者の日記
1月4日付の釜山日報に、あるギターリサイタルを紹介する記事が掲載されていた。1月14日19時釜山文化会館中劇場で開かれる 「デニス・ソンホ、ワルツとともに-旅行者の日記」 というタイトルの公演だ。演奏するのは韓国系ベルギー人ギタリスト、Denis Sungho JANSSENS氏。彼はこの公演についてこう語る。「ワルツといえば優雅さや幸福感、ノスタルジーや繊細さなどが思い浮かびますが、失われた記憶や風景のようなイメージもあります。過去は過ぎ去り、新しい歴史が始まるのです」。
今回の舞台は、彼が生まれた釜山で開く初めてのリサイタル。彼は1975年釜山で生まれた。しかし生後間もなく、釜山のある公衆トイレに置き去りにされていた。発見されたときは生後1日ぐらいと推測された。孤児院に預けられた彼は生後9ヶ月のとき、あるベルギー人へ養子として迎えられ、ベルギーで育った。
彼が釜山を初めて訪れたのは2006年のこと。実の親に会えたらという思いで来たが、これといった手がかりもなく会えないままベルギーに帰国。その後、2008年に再び釜山を訪れたとき、ある社会福祉館主催で開かれた海外養子縁組児に関する行事で、自分が置き去りにされていた公衆トイレの住所など、詳しい情報を知った。その後、テレビ番組にも出演してみたが、実の親とは会えないまま。
その後数年間は釜山を訪れることもなく過ぎたが、このたびギターのリサイタルを開くべく、再び釜山へ。もちろん、リサイタル会場で実の親と会えたら、という一縷の望みを抱いてのことだ。自分を捨てた親のことを、今はもう恨んでいないという。
今回のリサイタルは、釜山以外にも大邱・仁川・ソウル・浦項・光州・蔚山など全国7都市を回る予定。また3月から4ヶ月間、「韓国ポップ界のディーバ」 と呼ばれる인순이(イン・スニ)と一緒に全国ツアーを開く予定もある。
彼は8歳でギターを始め、14歳だった1989年にベルギー青少年音楽コンテストで1位を受賞。その後、パリ高等師範音楽院やブリュッセル王立音楽院などで学び、2004年ヨーロッパコンサートホール連盟の 「ライジング・スター」 に選ばれるなどしている。ニューヨークのカーネギーホールや、ザルツブルグ・モーツァルテウムなど有名劇場で独奏会も開いている。ブラジル出身のギターの巨匠セルジオ・アサドに師事したこともある。
ベルギー人でありながら韓国人でもある彼は、いつも 「旅行者」 として生きるしかなかった。そのストーリーを表現するのに、ワルツがよく合うと思ったのだそう。自身の人生のアルバムを見せるように、ショパンやバリオスのワルツ曲などを演奏する。自身が作曲した 「Korean Mountain Morning Due」 も披露する。
このリサイタルを夫と聴きに行った。

釜山日報で大きく取り上げられていたわりに観客は意外と少なく、寂しい感じがした。韓国では無名に近いからだろうか。観客が少ないせいか節電のためか、会場の中劇場内はやけに寒い。特に足もとが冷える。最初から最後まで、厚いダウンジャケットを着たままの観覧となった。隣の女性は途中で手袋をはめて聴いていた。
やがて開演時間になると、白いシャツに黒っぽいパンツ姿のデニス氏が、ギターを持って登場。人懐っこいにこやかな笑顔だ。挨拶などは全て英語で。ベルギーの公用語は主にオランダ語とフランス語だそう。デニス氏はパリで過ごしていた時期があったようなので、少なくともその3ヶ国語は自由に話せるのだろう。
この日のリサイタルについて大まかに説明すると、早速演奏に入る。演奏曲目は、以下の通り。
第1部
F. Chopin (1810-1849) Valse postume
I. Albeniz (1860-1909) Asturias
A. Barrios (1885-1944) Valse n. 3
J.K. Mertz (1806-1956) Hungarian Fantasy
F. Chopin (1810-1849) Valse op 69
Mauro Giuliani (1806-1819) Rossiniana n.1
第2部
Heitor Villa Lobos (1887-1959) Prelude 1 Emin Prelude 3 Amin
Roland Dyens (1955- ) Fuoco
Denis Sungho (1975- ) Korean Mountain Morning Due
Alberto Ginastera (1916-1983) Sonata op. 47
観客は少ないながらも、1曲演奏するごとに大きな拍手が起こる。全ての曲を終えるとアンコールの声。いったんステージに出てきて 「Thank you」 と挨拶だけしてまた袖に戻ったが、アンコールの声は続く。再びステージに登場した彼は、アンコールの声に応えてもう1曲演奏してくれた。
夫も私も、自身が作った 「Korean Mountain Morning Due」 という曲が一番印象に残った。どんな思いを込めて作ったのだろう。
リサイタルは釜山公演以外にも韓国6都市を回る予定だが、その中でも釜山は彼の誕生の地。特別な思い入れがあったのではないかと想像する。果たして、自身の実の両親との面会は叶ったのだろうか。
今回の舞台は、彼が生まれた釜山で開く初めてのリサイタル。彼は1975年釜山で生まれた。しかし生後間もなく、釜山のある公衆トイレに置き去りにされていた。発見されたときは生後1日ぐらいと推測された。孤児院に預けられた彼は生後9ヶ月のとき、あるベルギー人へ養子として迎えられ、ベルギーで育った。
彼が釜山を初めて訪れたのは2006年のこと。実の親に会えたらという思いで来たが、これといった手がかりもなく会えないままベルギーに帰国。その後、2008年に再び釜山を訪れたとき、ある社会福祉館主催で開かれた海外養子縁組児に関する行事で、自分が置き去りにされていた公衆トイレの住所など、詳しい情報を知った。その後、テレビ番組にも出演してみたが、実の親とは会えないまま。
その後数年間は釜山を訪れることもなく過ぎたが、このたびギターのリサイタルを開くべく、再び釜山へ。もちろん、リサイタル会場で実の親と会えたら、という一縷の望みを抱いてのことだ。自分を捨てた親のことを、今はもう恨んでいないという。
今回のリサイタルは、釜山以外にも大邱・仁川・ソウル・浦項・光州・蔚山など全国7都市を回る予定。また3月から4ヶ月間、「韓国ポップ界のディーバ」 と呼ばれる인순이(イン・スニ)と一緒に全国ツアーを開く予定もある。
彼は8歳でギターを始め、14歳だった1989年にベルギー青少年音楽コンテストで1位を受賞。その後、パリ高等師範音楽院やブリュッセル王立音楽院などで学び、2004年ヨーロッパコンサートホール連盟の 「ライジング・スター」 に選ばれるなどしている。ニューヨークのカーネギーホールや、ザルツブルグ・モーツァルテウムなど有名劇場で独奏会も開いている。ブラジル出身のギターの巨匠セルジオ・アサドに師事したこともある。
ベルギー人でありながら韓国人でもある彼は、いつも 「旅行者」 として生きるしかなかった。そのストーリーを表現するのに、ワルツがよく合うと思ったのだそう。自身の人生のアルバムを見せるように、ショパンやバリオスのワルツ曲などを演奏する。自身が作曲した 「Korean Mountain Morning Due」 も披露する。
このリサイタルを夫と聴きに行った。

釜山日報で大きく取り上げられていたわりに観客は意外と少なく、寂しい感じがした。韓国では無名に近いからだろうか。観客が少ないせいか節電のためか、会場の中劇場内はやけに寒い。特に足もとが冷える。最初から最後まで、厚いダウンジャケットを着たままの観覧となった。隣の女性は途中で手袋をはめて聴いていた。
やがて開演時間になると、白いシャツに黒っぽいパンツ姿のデニス氏が、ギターを持って登場。人懐っこいにこやかな笑顔だ。挨拶などは全て英語で。ベルギーの公用語は主にオランダ語とフランス語だそう。デニス氏はパリで過ごしていた時期があったようなので、少なくともその3ヶ国語は自由に話せるのだろう。
この日のリサイタルについて大まかに説明すると、早速演奏に入る。演奏曲目は、以下の通り。
第1部
F. Chopin (1810-1849) Valse postume
I. Albeniz (1860-1909) Asturias
A. Barrios (1885-1944) Valse n. 3
J.K. Mertz (1806-1956) Hungarian Fantasy
F. Chopin (1810-1849) Valse op 69
Mauro Giuliani (1806-1819) Rossiniana n.1
第2部
Heitor Villa Lobos (1887-1959) Prelude 1 Emin Prelude 3 Amin
Roland Dyens (1955- ) Fuoco
Denis Sungho (1975- ) Korean Mountain Morning Due
Alberto Ginastera (1916-1983) Sonata op. 47
観客は少ないながらも、1曲演奏するごとに大きな拍手が起こる。全ての曲を終えるとアンコールの声。いったんステージに出てきて 「Thank you」 と挨拶だけしてまた袖に戻ったが、アンコールの声は続く。再びステージに登場した彼は、アンコールの声に応えてもう1曲演奏してくれた。
夫も私も、自身が作った 「Korean Mountain Morning Due」 という曲が一番印象に残った。どんな思いを込めて作ったのだろう。
リサイタルは釜山公演以外にも韓国6都市を回る予定だが、その中でも釜山は彼の誕生の地。特別な思い入れがあったのではないかと想像する。果たして、自身の実の両親との面会は叶ったのだろうか。
Posted by dilbelau at 09:05│Comments(6)
│文化・芸術・エンタメ
この記事へのコメント
寒いのでしょうけど、ハートが温まるようなコンサート。
> 果たして、自身の実の両親との面会は叶ったのだろうか。
それぞれの人生。う~ん、そこが知れたいですね。
> 果たして、自身の実の両親との面会は叶ったのだろうか。
それぞれの人生。う~ん、そこが知れたいですね。
Posted by hagi1
at 2012年01月24日 13:37

hagi1 さま
どうだったのでしょうね。
きっと彼は、韓国の両親に聴かせるつもりで演奏していたのだろうと想像します。
どうだったのでしょうね。
きっと彼は、韓国の両親に聴かせるつもりで演奏していたのだろうと想像します。
Posted by dilbelau
at 2012年01月24日 17:14

私も、そうだと思います。
切ないですね。
会えたらいいのに・・・。
いや、会える。
いつか会える。
多分、会える。
切ないですね。
会えたらいいのに・・・。
いや、会える。
いつか会える。
多分、会える。
Posted by hagi1
at 2012年01月24日 18:38

こんばんは。素晴らしい紹介記事を読ませて頂きました。
気にの内容からどんな演奏をするのだろうと思い、
彼の演奏を「You Tube」で聴きました。
繊細なガットギターの演奏で、彼の性格や人生そのものを
ギターの6本の弦に乗せて演奏している様な気がしました。
自ブログでも紹介させて頂きますね。宜しくお願いします。
個々の思いの伝わる記事をありがとうございました。
気にの内容からどんな演奏をするのだろうと思い、
彼の演奏を「You Tube」で聴きました。
繊細なガットギターの演奏で、彼の性格や人生そのものを
ギターの6本の弦に乗せて演奏している様な気がしました。
自ブログでも紹介させて頂きますね。宜しくお願いします。
個々の思いの伝わる記事をありがとうございました。
Posted by MCしま~
at 2012年01月24日 19:54

hagi1 さま
実の両親に会うということは、自分のアイデンティティを確立することにもつながるのでしょう。一度でいいから対面したい、そうでなければこれからもずっと 「旅行者」 としか生きていけない、そういう思いもあるのではないかと、勝手な想像ながら、感じます。
実の両親に会うということは、自分のアイデンティティを確立することにもつながるのでしょう。一度でいいから対面したい、そうでなければこれからもずっと 「旅行者」 としか生きていけない、そういう思いもあるのではないかと、勝手な想像ながら、感じます。
Posted by dilbelau
at 2012年01月24日 20:58

MCしま~ さま
演奏をお聴きになったのですね。
彼に限らず、ミュージシャンや俳優、作家など、何かを表現することを仕事としている人は、多かれ少なかれ自身の内面や人生がその作品に現れるものなのでしょうね。
ブログでもご紹介いただけるとのこと、どうもありがとうございます。
よろしくお願いします。
演奏をお聴きになったのですね。
彼に限らず、ミュージシャンや俳優、作家など、何かを表現することを仕事としている人は、多かれ少なかれ自身の内面や人生がその作品に現れるものなのでしょうね。
ブログでもご紹介いただけるとのこと、どうもありがとうございます。
よろしくお願いします。
Posted by dilbelau
at 2012年01月24日 21:02
