2011年03月21日
Pray for Japan
3月11日の東北地方太平洋沖大地震発生から、新聞社内で私が所属している国際チームの記者たちは、連日特別態勢で地震・津波や原発関連のニュースを報道している。当然、テレビや新聞・ネットなど日本のメディアが流す情報にも、細やかに目を通して情報収集している。
そんな記者たちが、日本の被災者たちの姿を見て疑問に思うことがあると言う。
「悲しいのに何故泣かないのか」
「物資が充分に届かず不自由な避難所生活をしているにも関わらず、何故じっと我慢しているのか」
という2点が、中でも特に不思議に思うのだと言う。
一つ目の 「悲しいのに何故泣かないのか」 という疑問は、以前にも何度か韓国人の友人たちから全く同じ質問を受けたことがある。2009年11月14日に釜山で起きた射撃場事故のときだ。テレビに映し出される被害者の家族たちの様子。待機室でまんじりともせず不安な夜を明かすご家族は、大きく取り乱す様子もないように韓国人には見えたのだ。
もちろん、泣いていないわけではない。テレビには映らないところで、人目につかないところで、どうしようもない悲しみや怒りや不安の涙を流され、やりきれない思いでいっぱいだったはずだ。
今回の震災・津波でご家族を失われた(あるいは行方不明の)被災者が、マスコミのインタビューに対し呆然とした様子で気持ちをつぶやいている様子が映し出されていた。あまりに突然の出来事で、ご家族の死や行方不明であることをにわかには信じられない状態なのだろうと思う。しかしその 「泣かない」 様子が韓国人にはとても不思議なのだ。
韓国人は悲しい出来事に直面すると大声を上げて泣き叫び、こぶしで胸を叩き、失神するのではないかと思うほどその感情をストレートに表す。最近では2010年3月26日に発生した、「天安号沈没事件」 のご遺族の様子がまさにそうだった。
韓国人の友人によると、悲しいときには泣いて叫んで感情を表に出してこそ、悲しみを乗り越えていくことができるのだと。日本人は何故悲しいのに泣かずにじっと我慢するのか理解できないと、友人・知人に言われたのは一度や二度ではない。
人前で激しい感情をあらわにするのはあまり好ましいことではない、と幼い頃から言われて育ってきた日本人。特に 「人前で泣く」 のは避けようとする人が多いのではないだろうか。それに対し、感情は外に吐露してこそ前に進んでいくことができるという考えが当たり前の韓国。
韓国人が大の大人でも声を上げて泣きわめき身体全体で悲しみを表現する姿が、日本人には奇異に見えるように、悲しいのに泣くのをこらえてじっと耐えようとする日本人の姿は、韓国人には奇異に見えるのだ。
もう一つの 「物資が充分届かず不自由な避難所生活をしているにも関わらず、何故じっと我慢しているのか」 というのもとても不思議なことなのだと言う。
避難所で食料や毛布などが不足してもお互いに譲り合う。水やガソリンの配給時もきちんと整列して、何時間でも辛抱強く並ぶ。あげく水やガソリンが底をついて手に入らなかったとしても、文句を言わず次の配給を待つ。スーパーなどの店頭から品物が消え、欲しい品物が手に入らなくても次に入荷するまで待つ。店主がいない店でも略奪はみられない。他人の迷惑になるようなことはしない。
これら、劣悪な状況でも我慢してお互いに譲り合う姿、混乱の中にあっても秩序を守る姿は、韓国のみならず世界中のマスコミで驚きとともに報道されていた。世界一のマナー大国だとも。
しかし韓国人の目には、これも少々奇異に映るようだ。韓国なら、ただ我慢しているだけでなく何らかのアクションを起こすだろうと。水や食料や毛布がなくて困っていること、避難所の環境が劣悪であることなどを、もっと政府や世間に強くアピールして改善へと導くのだと。
ここでも泣くのを我慢するのと同じく、何故不自由な生活を黙って我慢するのか理解しづらいようだ。
日本人が何故泣かない(ように見える)のか、我慢ばかりしているように見えるのか、日本人として私なりの考えを説明してみても、記者たちは首をかしげて納得いかない様子。一国の根底に流れる精神論的なものは、そう簡単に語られるはずもないので当然といえば当然だろう。
しかし、そういう価値観や文化の違いとは全く違う次元で、韓国も日本もそして世界中が心を一つにしていることがある。被災者に救いの手を差し伸べたいという気持ちだ。韓国でも、日本人ファンの多い韓流スターや歌手が巨額の寄付をしたり、各種企業・団体が続々と寄付・募金活動を行ったり、また民間レベルでの募金もあちこちで行われている。
3月13日に始まった韓国の大手検索サイト 「Daum」 のネット上の募金活動(目標1億ウォン・4月8日締め切り)は、21日朝の時点で8,758万ウォン以上にまで達している。
もちろん、中には 「日本へ募金する前に飢えに苦しむ北朝鮮に食料を」 という声や、慰安婦問題・竹島問題などを引き合いに出して募金することに賛成しない人、「お金より物資を送った方がよい」 という声など、募金活動に対しては賛否両論あるのも事実。人によって価値観も違えば、置かれた立場によって感じ方が違うのは当然だろう。しかし、一人ひとりの温かい心が集まってこれだけ巨額の募金が集まったというのもまた事実だ。
日本や韓国を含め世界各国で 「Pray for Japan」 の気運が高まっている。世界中の人々の祈りが、絶望の中にある人々の心に一条の光を届けられますように。

そんな記者たちが、日本の被災者たちの姿を見て疑問に思うことがあると言う。
「悲しいのに何故泣かないのか」
「物資が充分に届かず不自由な避難所生活をしているにも関わらず、何故じっと我慢しているのか」
という2点が、中でも特に不思議に思うのだと言う。
一つ目の 「悲しいのに何故泣かないのか」 という疑問は、以前にも何度か韓国人の友人たちから全く同じ質問を受けたことがある。2009年11月14日に釜山で起きた射撃場事故のときだ。テレビに映し出される被害者の家族たちの様子。待機室でまんじりともせず不安な夜を明かすご家族は、大きく取り乱す様子もないように韓国人には見えたのだ。
もちろん、泣いていないわけではない。テレビには映らないところで、人目につかないところで、どうしようもない悲しみや怒りや不安の涙を流され、やりきれない思いでいっぱいだったはずだ。
今回の震災・津波でご家族を失われた(あるいは行方不明の)被災者が、マスコミのインタビューに対し呆然とした様子で気持ちをつぶやいている様子が映し出されていた。あまりに突然の出来事で、ご家族の死や行方不明であることをにわかには信じられない状態なのだろうと思う。しかしその 「泣かない」 様子が韓国人にはとても不思議なのだ。
韓国人は悲しい出来事に直面すると大声を上げて泣き叫び、こぶしで胸を叩き、失神するのではないかと思うほどその感情をストレートに表す。最近では2010年3月26日に発生した、「天安号沈没事件」 のご遺族の様子がまさにそうだった。
韓国人の友人によると、悲しいときには泣いて叫んで感情を表に出してこそ、悲しみを乗り越えていくことができるのだと。日本人は何故悲しいのに泣かずにじっと我慢するのか理解できないと、友人・知人に言われたのは一度や二度ではない。
人前で激しい感情をあらわにするのはあまり好ましいことではない、と幼い頃から言われて育ってきた日本人。特に 「人前で泣く」 のは避けようとする人が多いのではないだろうか。それに対し、感情は外に吐露してこそ前に進んでいくことができるという考えが当たり前の韓国。
韓国人が大の大人でも声を上げて泣きわめき身体全体で悲しみを表現する姿が、日本人には奇異に見えるように、悲しいのに泣くのをこらえてじっと耐えようとする日本人の姿は、韓国人には奇異に見えるのだ。
もう一つの 「物資が充分届かず不自由な避難所生活をしているにも関わらず、何故じっと我慢しているのか」 というのもとても不思議なことなのだと言う。
避難所で食料や毛布などが不足してもお互いに譲り合う。水やガソリンの配給時もきちんと整列して、何時間でも辛抱強く並ぶ。あげく水やガソリンが底をついて手に入らなかったとしても、文句を言わず次の配給を待つ。スーパーなどの店頭から品物が消え、欲しい品物が手に入らなくても次に入荷するまで待つ。店主がいない店でも略奪はみられない。他人の迷惑になるようなことはしない。
これら、劣悪な状況でも我慢してお互いに譲り合う姿、混乱の中にあっても秩序を守る姿は、韓国のみならず世界中のマスコミで驚きとともに報道されていた。世界一のマナー大国だとも。
しかし韓国人の目には、これも少々奇異に映るようだ。韓国なら、ただ我慢しているだけでなく何らかのアクションを起こすだろうと。水や食料や毛布がなくて困っていること、避難所の環境が劣悪であることなどを、もっと政府や世間に強くアピールして改善へと導くのだと。
ここでも泣くのを我慢するのと同じく、何故不自由な生活を黙って我慢するのか理解しづらいようだ。
日本人が何故泣かない(ように見える)のか、我慢ばかりしているように見えるのか、日本人として私なりの考えを説明してみても、記者たちは首をかしげて納得いかない様子。一国の根底に流れる精神論的なものは、そう簡単に語られるはずもないので当然といえば当然だろう。
しかし、そういう価値観や文化の違いとは全く違う次元で、韓国も日本もそして世界中が心を一つにしていることがある。被災者に救いの手を差し伸べたいという気持ちだ。韓国でも、日本人ファンの多い韓流スターや歌手が巨額の寄付をしたり、各種企業・団体が続々と寄付・募金活動を行ったり、また民間レベルでの募金もあちこちで行われている。
3月13日に始まった韓国の大手検索サイト 「Daum」 のネット上の募金活動(目標1億ウォン・4月8日締め切り)は、21日朝の時点で8,758万ウォン以上にまで達している。
もちろん、中には 「日本へ募金する前に飢えに苦しむ北朝鮮に食料を」 という声や、慰安婦問題・竹島問題などを引き合いに出して募金することに賛成しない人、「お金より物資を送った方がよい」 という声など、募金活動に対しては賛否両論あるのも事実。人によって価値観も違えば、置かれた立場によって感じ方が違うのは当然だろう。しかし、一人ひとりの温かい心が集まってこれだけ巨額の募金が集まったというのもまた事実だ。
日本や韓国を含め世界各国で 「Pray for Japan」 の気運が高まっている。世界中の人々の祈りが、絶望の中にある人々の心に一条の光を届けられますように。

Posted by dilbelau at 07:57│Comments(6)
│時事話題
この記事へのコメント
こんばんは。再びコメントさせて頂きます。
「Pray for Japan」…ありがたいですね。
一日本人として感謝です。
メディアでは諸外国での声は断片的には聴こえて来ますが、
その国の内情や思いまでは図り知れません。
その様な点では「韓国」の声が聴こえた様で嬉しいです。
また個々の国の感情表現の違いが参考になりました。
ギターの記事は明日の朝にUPします。
dilbelauさんのブログも紹介させて頂きます。
今後も素晴らし記事に期待します。
宜しくお願い致します。
「Pray for Japan」…ありがたいですね。
一日本人として感謝です。
メディアでは諸外国での声は断片的には聴こえて来ますが、
その国の内情や思いまでは図り知れません。
その様な点では「韓国」の声が聴こえた様で嬉しいです。
また個々の国の感情表現の違いが参考になりました。
ギターの記事は明日の朝にUPします。
dilbelauさんのブログも紹介させて頂きます。
今後も素晴らし記事に期待します。
宜しくお願い致します。
Posted by MCしま~
at 2011年03月21日 21:49

MCしま~ さま
こんばんは。
今回の災害に対しては、日本国内はもちろんのこと、本当に数多くの国が協力してくれていると報道されていますね。
それら一人ひとりの方の想いが、被災者の方々の心に届きますようにと祈るばかりです。
ギターの記事や拙ブログを紹介してくださるとのこと、どうもありがとうございます。こちらこそ、今後も楽しみに拝見させていただきます。
こんばんは。
今回の災害に対しては、日本国内はもちろんのこと、本当に数多くの国が協力してくれていると報道されていますね。
それら一人ひとりの方の想いが、被災者の方々の心に届きますようにと祈るばかりです。
ギターの記事や拙ブログを紹介してくださるとのこと、どうもありがとうございます。こちらこそ、今後も楽しみに拝見させていただきます。
Posted by dilbelau
at 2011年03月21日 23:49

韓国メディアの反応は興味深くチェックしております。
被災地のコンビニで食料品や飲料水が品切れになる中「辛ラーメン」が大量に売れ残っているのは韓国民として屈辱だ!という記事を見たときは思わず噴き出してしまいました。
震災翌日の「日本沈没」や「天誅」と言った記事に触れたときは「まあ、また始まったか」と思っていたのですが、事態の深刻さが明らかになるにつれ、そのような記事が鳴りを潜め、同情的な論調に変わっていったのが印象的でしたね。
被災地のコンビニで食料品や飲料水が品切れになる中「辛ラーメン」が大量に売れ残っているのは韓国民として屈辱だ!という記事を見たときは思わず噴き出してしまいました。
震災翌日の「日本沈没」や「天誅」と言った記事に触れたときは「まあ、また始まったか」と思っていたのですが、事態の深刻さが明らかになるにつれ、そのような記事が鳴りを潜め、同情的な論調に変わっていったのが印象的でしたね。
Posted by ジャカルタ駐在員
at 2011年03月24日 04:28

ジャカルタ駐在員 さま
昨夜のニュースでは、逆に 「辛ラーメン」 をはじめとする韓国製インスタントラーメンの日本からの注文が急増しており、対応が追いつかないほどだと報道されていました。国内で品薄になっているので、韓国から取り寄せるということでしょう。
中央日報の 「日本沈没」 は、韓国内でも批判の声が多かったようですね。震災から2週間近く経ち、メディアの報道も視点が変わってきましたね。それにしても韓国の募金・支援活動の活発さはすごいです。ありがたいことです。
昨夜のニュースでは、逆に 「辛ラーメン」 をはじめとする韓国製インスタントラーメンの日本からの注文が急増しており、対応が追いつかないほどだと報道されていました。国内で品薄になっているので、韓国から取り寄せるということでしょう。
中央日報の 「日本沈没」 は、韓国内でも批判の声が多かったようですね。震災から2週間近く経ち、メディアの報道も視点が変わってきましたね。それにしても韓国の募金・支援活動の活発さはすごいです。ありがたいことです。
Posted by dilbelau
at 2011年03月24日 09:15

実は、、私の妻も近所の仲の良い友人から<どうして日本人は・・>
と、貴女がまわりの方々から受けたと同じ内容の質問を受けたそうです。
それで私は何て教えてあげたの?・・と聞きましたところ
妻は<日本や先進諸国で暮らした経験のない韓国人には、いくら説明しても理解出来ないだろう>・・と思い<DNAの違いじゃないかな?>と、答えたそうです。 何と少し差別的な物言いに驚いてしまいました。
私はホントはどう思う?と聞きましたら、、
<はっきり言って小さいときからの教育の違いで、それが性格や人格が形成されるうえで、韓国人との違いになって現れるのだろう>などと言っておりました。
私も現在は韓国に住んでおりますので<中央日報>や<朝鮮日報>の日本語版に良く目をとうしておりますが・・
日本人の物の考え方と韓国人の物の考え方の差をうまく表現された文章が多く・・興味深く読んで降ります。
最近は韓国でも<大きな地震はありうる>などと物騒な話題もあります。韓国での<避難生活>は考えたくないのが本音ですな。
と、貴女がまわりの方々から受けたと同じ内容の質問を受けたそうです。
それで私は何て教えてあげたの?・・と聞きましたところ
妻は<日本や先進諸国で暮らした経験のない韓国人には、いくら説明しても理解出来ないだろう>・・と思い<DNAの違いじゃないかな?>と、答えたそうです。 何と少し差別的な物言いに驚いてしまいました。
私はホントはどう思う?と聞きましたら、、
<はっきり言って小さいときからの教育の違いで、それが性格や人格が形成されるうえで、韓国人との違いになって現れるのだろう>などと言っておりました。
私も現在は韓国に住んでおりますので<中央日報>や<朝鮮日報>の日本語版に良く目をとうしておりますが・・
日本人の物の考え方と韓国人の物の考え方の差をうまく表現された文章が多く・・興味深く読んで降ります。
最近は韓国でも<大きな地震はありうる>などと物騒な話題もあります。韓国での<避難生活>は考えたくないのが本音ですな。
Posted by 金海のおじさん at 2011年03月24日 13:03
金海のおじさん さま
なるほど、そうですよね。私も教育の力は大きいと思います。
また、職場の上司(韓国人)は、韓国は民主化を求めて常に闘ってきたという歴史があり、日本は長く続いた武士の歴史があり、それぞれの歴史の中で形成された ”民族の血” のようなものがあるのでは、という意見でした。
いずれにしても、韓国で大地震というのは考えるだけで恐ろしいですね。こんなにたくさん建ってしまった高層アパートも怖いですが、おっしゃる通りこちらでの避難生活はいろいろな意味でハードな気がします・・・。
なるほど、そうですよね。私も教育の力は大きいと思います。
また、職場の上司(韓国人)は、韓国は民主化を求めて常に闘ってきたという歴史があり、日本は長く続いた武士の歴史があり、それぞれの歴史の中で形成された ”民族の血” のようなものがあるのでは、という意見でした。
いずれにしても、韓国で大地震というのは考えるだけで恐ろしいですね。こんなにたくさん建ってしまった高層アパートも怖いですが、おっしゃる通りこちらでの避難生活はいろいろな意味でハードな気がします・・・。
Posted by dilbelau
at 2011年03月24日 19:44
