つづき
それはともかく。私は선지국밥(ソンジクッパッ)、夫は소고기국밥(ソコギクッパッ)を注文。いずれも3,500wという安さだが、2~3年前まではなんと3,000wだったそうだ。いまどきカルグクスでも3,000wではほとんどない。
この店は、ソンジクッパッもソコギクッパッもスープにご飯が入った状態で出てくるが、ご飯とスープが別々になった따로국밥(タロクッパッ)はそれぞれ4,000w。また선지국수(ソンジククス)は3,500w。
注文するが早いか、お盆に小皿とヤクルト、箸・スプーンが出てくる。各テーブルに大根の漬物・カクトゥギ・ニンニクの茎が用意されているので、食べるだけ小皿に取り分けていただく。特にカクトゥギが美味。大根の甘さが感じられ、ポリポリと止まらなくなるおいしさだ。
続いて間髪入れずにクッパッが運ばれてくる。本当に速い。何しろ店先の釜のそばにはご飯をよそった器が準備してあり、注文と同時にスープを入れてネギを散らせば出来上がり、なのだから。ソンジクッパッ(▼)。
ソンジは牛の血を凝結させたもの。昔は家畜が今よりももっと貴重だったため、1頭の家畜をほふると、肉だけでなく内臓や血液まで全て無駄にすることなく利用していた。牛肉の血はソンジクッに、豚肉の血や腸はスンデに・・・と、文字通り捨てる部分はなかったそうだ。
血を固めたものというと生々しいが、鉄分をはじめ栄養豊富、しかも低カロリーなので美容食として韓国では女性にも好まれる。味は上手に調理したレバー炒めのような感じ。レバーが嫌いな人でない限り、クセも臭みもなくおいしく食べられるだろう。
具はソンジとご飯以外に、大根やもやしが入っている。スープは赤いので一見辛そうだが、これが全く辛くない。コクと深みがあり、後味さっぱりの非常においしいスープ。50年間愛され続けているはずだ。ソコギクッパッ(▼)は、ソンジクッパッのソンジの代わりに牛肉が入ったもの。
想像以上においしかった。入っているご飯の量は、一般的な食堂で出される1食分のご飯より少なめのようで、夕方早めにおなかが空いてきたが、3,500wであのおいしさなら大満足だ。
仕上げにヤクルトをいただく。クッパッとヤクルト、妙にマッチする気がする。
この本店が手狭になったため、2軒くらい隣にもう1軒店を構えた(▼)。本店も、食堂としてはものすごく狭いということでもないが、客の数がかなり多いためということだろう。同じくおばあさんの顔写真と赤い看板が目印。
店の前のかまどでは大鍋でスープを煮ている。今はガスの配管が見えるが、昔は薪を使っていたのだろうか。
かまど近くの窓にはメニューがカタカナでも書かれており、日本人客の多さを物語っている。ただし 「ギコニク タロ クシペ」、「ソンジ クシペ」 と日本語はかなり怪しい。それぞれ正しくは 「ギュウニク タロ クッパ」、「ソンジ クッパ」 だ。もっともこの手の怪しい日本語はここに限ったことではないが。
またこの通りに並んでいる他のクッパッ屋さんの中には、ソンジクッパッのことを 「鮮血クッパ」 と日本語で表示してある店もあり、これはちょっとどうかなと・・・。確かに、辞書にはソンジ(선지)は 「畜殺したときに出る鮮血」 と書いてあるがあまりに生々しい。まあそういうことも含めて話題になりつつ日本人の間でも人気がある店なのだろう。
원조할매국밥
釜山市海雲台区佑洞612-2
(051) 746-0387, 731-3363