2010年09月12日
知らない人からお菓子をもらってはいけません??
我が家のアパートの隣の棟にお住まいで、日本語を勉強されている友人Kさん(韓国人)が先日、音楽会の案内をくださった。「수영구민을 위한 한마음 음악회」 という音楽会。直訳すると 「水営区民のための ”心を一つに” 音楽会」。
Kさんは以前から장구(チャング)という韓国の太鼓を習っていらっしゃったのだが、今回は 「国楽チーム」 として出演しその歌声を披露されるのだという。会場は慶星大学内のコンサートホール。
案内をいただくまで知らなかったのだが、この日の 「水営区民のための ”心を一つに” 音楽会」 は、9月1日~12日まで開かれる 「2010 第1回 釜山マル国際音楽祭(BMIMF)」 の一環として開かれる音楽会なのだそうだ。
「2010 第1回 釜山マル国際音楽祭(BMIMF)」 とは、釜山国際映画祭、同演劇祭、同舞踊祭、ビエンナーレなどに匹敵するような世界的な音楽祭を通して、釜山の芸術のバランスのとれた発展と、国際的な文化インフラを作るため開催されるのだそう。
今回の音楽祭には国内外の有名なオーケストラ3チーム180名、ソリスト9名、地域クラシック音楽家42チーム900余名が参加するとのこと。ちなみにマル(마루)という韓国語には、山の背・屋根の頂・縁側・廊下・物事の最盛期・空・天・天国など、たくさんの意味があるようだ。
音楽祭は ”メイン演奏会” と ”フリンジコンサート” の大きく2つに分かれている。”メイン演奏会” は9月7日のBMIMF開催祝賀音楽会、8日の開幕演奏(釜山市立交響楽団)などに始まり、12日の閉幕演奏(上海フェスティバルオーケストラ)で締めくくられる。テーマは ”フランスの香り” なのだそうだ。
夫と私は、12日の上海フェスティバルオーケストラも聴きに行く予定で、非常に楽しみだ。
メイン演奏会の会場は、釜山市民会館、金井文化会館、影島文化芸術会館、乙淑島文化会館などの大きな会館。フリンジコンサートの会場はもう少し小規模な会場で、大学のコンサートホールや教会、海雲台駅前の広場、梵魚寺、地下鉄 「沙上」 駅、病院の地下講堂、広安里海水浴場などなど多岐にわたる。
さて、会場の慶星大学コンサートホールに到着。メイン演奏会は入場料が必要であるのに対し、フリンジコンサートは無料であることもあってか、平日の夜にもかかわらずけっこう大勢の客が来ている。
この日演奏するのは、Kさんが出演する国楽チームのほかにも、水営区女性合唱団や水営区少年少女合唱団など全部で8チーム。演奏会を聴きに来ている人の中には、出演者の家族や友人たちも多いようだ。
私は少し早めについたので、適当な席に座り開演を待つ。ほどよくきいたエアコンと座り心地のいい椅子、適度なザワザワ感、さらに夕食後間もなくておなかがいっぱいということもあり、軽く目を閉じてウトウトしていた。しかし完全に眠ってしまうということはなく、周りの人たちの声は聞こえていた。
私の座った席の近くに座っていたのは、全員で10人ぐらいのおばちゃんグループ。私の前列および隣に、5~6人ずつに分かれて2グループで並んで座っている。
会場入り口を見て連れを見つけたら 「あ、〇〇さん、こっちこっち~!」 と呼びかけたり、あるいはガサゴソとかばんの中から何やら取り出したと思ったら、グループのメンバーのみんなに行き渡るよう、お菓子の袋を ”配給” している。「これ食べて」 『どこで買ってきたの?』 「〇〇で」 『そっちあるの?』 「ある、ある。こっちにもあるから、それはそっちで食べて」 などと、まるで遠足のように賑やかだ。
そんな賑やかな声が、聞くともなく耳に入ってくるような状態で目を閉じていると、やがて開演を知らせる大きなドラの音。私は姿勢を正してステージ上を見る。会場の照明が落とされる。
まず司会者が挨拶。続いて来賓の紹介をしている頃だっただろうか、突然、私の隣に座っていたおばさんの手が、膝の上に置いていた私の手の上に・・・(驚)
何の前触れもなく突然に置かれた手。しかも無言で。もちろん面識のないおばさんだ。
私が驚いていると、やおらおばさんは自分の手をどける。すると私の手の上には、お菓子が3かけらほど・・・(笑)
開演前にグループのおばさん同士で食べていたお菓子だろう。きっとおばさんたちが食べていたときは、私は目を閉じてウトウトしていたので渡そうと思っても渡せず、今ならいいだろうと思ってくださったようだ。無言だったのは、司会者が話をしているので邪魔にならないようにという配慮だろう。
くださったお菓子は、渦巻き模様のかりんとうのようなもの。素朴な優しい味と歯ごたえがおいしいお菓子だ。お礼を言っていただく。
ここでも、韓国の ”分けて食べる文化” ”分かち合う文化” だ。
知っている人同士がお菓子を分け合って食べるのは日本でも同じだが、たまたま隣り合った席に座ったからといって、全く見ず知らずの人にまでお菓子を分けるというのは、日本ではもうあまり見かけなくなった光景だろう。
例えば列車で旅をしていて、ボックス席に座り合わせた人同士なら、顔を突き合わせていることもあって、お菓子をどうぞ、あらありがとうございます、どちらから?などという会話が始まることもあるだろう。
しかし、この日おばさんたちがお菓子を食べていたとき、私は目を閉じてウトウトしていた。決してお菓子を欲しそうにしていたわけではないし、私が目を開けたときはすでに開演のときでステージに集中していた。何もわざわざお菓子をくれなくてもいい場面なのに、それでも分けてくださるのが韓国なのだ。
韓国人の友人や、知り合いになった夫の教え子(大学生)などからも、”自分だけ食べるのはとても居心地が悪い” のだと何度か聞いたことがある。それこそ、飴玉1つでも割って分けてくださる韓国だ。
日本では(韓国でも)児童が犯罪の被害者になるケースが増えるにつけ、「知らない人について行ってはいけません」、「知らない人からお菓子をもらってはいけません」 などと教えねばならない時代。
何となく心寂しく感じる現代において、韓国のこういう ”分け合う” 文化に触れると心がほっとする。
さて、いよいよ演奏会の始まり。最初の出演者は、水営区女性合唱団。

つづく
Kさんは以前から장구(チャング)という韓国の太鼓を習っていらっしゃったのだが、今回は 「国楽チーム」 として出演しその歌声を披露されるのだという。会場は慶星大学内のコンサートホール。
案内をいただくまで知らなかったのだが、この日の 「水営区民のための ”心を一つに” 音楽会」 は、9月1日~12日まで開かれる 「2010 第1回 釜山マル国際音楽祭(BMIMF)」 の一環として開かれる音楽会なのだそうだ。
「2010 第1回 釜山マル国際音楽祭(BMIMF)」 とは、釜山国際映画祭、同演劇祭、同舞踊祭、ビエンナーレなどに匹敵するような世界的な音楽祭を通して、釜山の芸術のバランスのとれた発展と、国際的な文化インフラを作るため開催されるのだそう。
今回の音楽祭には国内外の有名なオーケストラ3チーム180名、ソリスト9名、地域クラシック音楽家42チーム900余名が参加するとのこと。ちなみにマル(마루)という韓国語には、山の背・屋根の頂・縁側・廊下・物事の最盛期・空・天・天国など、たくさんの意味があるようだ。
音楽祭は ”メイン演奏会” と ”フリンジコンサート” の大きく2つに分かれている。”メイン演奏会” は9月7日のBMIMF開催祝賀音楽会、8日の開幕演奏(釜山市立交響楽団)などに始まり、12日の閉幕演奏(上海フェスティバルオーケストラ)で締めくくられる。テーマは ”フランスの香り” なのだそうだ。
夫と私は、12日の上海フェスティバルオーケストラも聴きに行く予定で、非常に楽しみだ。
メイン演奏会の会場は、釜山市民会館、金井文化会館、影島文化芸術会館、乙淑島文化会館などの大きな会館。フリンジコンサートの会場はもう少し小規模な会場で、大学のコンサートホールや教会、海雲台駅前の広場、梵魚寺、地下鉄 「沙上」 駅、病院の地下講堂、広安里海水浴場などなど多岐にわたる。
さて、会場の慶星大学コンサートホールに到着。メイン演奏会は入場料が必要であるのに対し、フリンジコンサートは無料であることもあってか、平日の夜にもかかわらずけっこう大勢の客が来ている。
この日演奏するのは、Kさんが出演する国楽チームのほかにも、水営区女性合唱団や水営区少年少女合唱団など全部で8チーム。演奏会を聴きに来ている人の中には、出演者の家族や友人たちも多いようだ。
私は少し早めについたので、適当な席に座り開演を待つ。ほどよくきいたエアコンと座り心地のいい椅子、適度なザワザワ感、さらに夕食後間もなくておなかがいっぱいということもあり、軽く目を閉じてウトウトしていた。しかし完全に眠ってしまうということはなく、周りの人たちの声は聞こえていた。
私の座った席の近くに座っていたのは、全員で10人ぐらいのおばちゃんグループ。私の前列および隣に、5~6人ずつに分かれて2グループで並んで座っている。
会場入り口を見て連れを見つけたら 「あ、〇〇さん、こっちこっち~!」 と呼びかけたり、あるいはガサゴソとかばんの中から何やら取り出したと思ったら、グループのメンバーのみんなに行き渡るよう、お菓子の袋を ”配給” している。「これ食べて」 『どこで買ってきたの?』 「〇〇で」 『そっちあるの?』 「ある、ある。こっちにもあるから、それはそっちで食べて」 などと、まるで遠足のように賑やかだ。
そんな賑やかな声が、聞くともなく耳に入ってくるような状態で目を閉じていると、やがて開演を知らせる大きなドラの音。私は姿勢を正してステージ上を見る。会場の照明が落とされる。
まず司会者が挨拶。続いて来賓の紹介をしている頃だっただろうか、突然、私の隣に座っていたおばさんの手が、膝の上に置いていた私の手の上に・・・(驚)
何の前触れもなく突然に置かれた手。しかも無言で。もちろん面識のないおばさんだ。
私が驚いていると、やおらおばさんは自分の手をどける。すると私の手の上には、お菓子が3かけらほど・・・(笑)
開演前にグループのおばさん同士で食べていたお菓子だろう。きっとおばさんたちが食べていたときは、私は目を閉じてウトウトしていたので渡そうと思っても渡せず、今ならいいだろうと思ってくださったようだ。無言だったのは、司会者が話をしているので邪魔にならないようにという配慮だろう。
くださったお菓子は、渦巻き模様のかりんとうのようなもの。素朴な優しい味と歯ごたえがおいしいお菓子だ。お礼を言っていただく。
ここでも、韓国の ”分けて食べる文化” ”分かち合う文化” だ。
知っている人同士がお菓子を分け合って食べるのは日本でも同じだが、たまたま隣り合った席に座ったからといって、全く見ず知らずの人にまでお菓子を分けるというのは、日本ではもうあまり見かけなくなった光景だろう。
例えば列車で旅をしていて、ボックス席に座り合わせた人同士なら、顔を突き合わせていることもあって、お菓子をどうぞ、あらありがとうございます、どちらから?などという会話が始まることもあるだろう。
しかし、この日おばさんたちがお菓子を食べていたとき、私は目を閉じてウトウトしていた。決してお菓子を欲しそうにしていたわけではないし、私が目を開けたときはすでに開演のときでステージに集中していた。何もわざわざお菓子をくれなくてもいい場面なのに、それでも分けてくださるのが韓国なのだ。
韓国人の友人や、知り合いになった夫の教え子(大学生)などからも、”自分だけ食べるのはとても居心地が悪い” のだと何度か聞いたことがある。それこそ、飴玉1つでも割って分けてくださる韓国だ。
日本では(韓国でも)児童が犯罪の被害者になるケースが増えるにつけ、「知らない人について行ってはいけません」、「知らない人からお菓子をもらってはいけません」 などと教えねばならない時代。
何となく心寂しく感じる現代において、韓国のこういう ”分け合う” 文化に触れると心がほっとする。
さて、いよいよ演奏会の始まり。最初の出演者は、水営区女性合唱団。
つづく
Posted by dilbelau at 09:11│Comments(0)
│文化・芸術・エンタメ