2008年10月28日
2008年10月28日(火)韓国語で落語ー笑福亭銀瓶
さて、浴衣の着付けの練習が終わり、おいしい昼食もいただいて、午後は9人ほぼそのままのメンバーで「韓国語の落語」をみにいく。
9月23日から11月23日まで、釜山博物館30周年を記念して「韓国と日本」特別展が開かれている。
この特別展を記念して、在釜山日本総領事館が3つのイベントを開催している。
1つ目のイベントはすでに終わったが和太鼓の公演。
2つ目のイベントが今日の「韓国語の落語」。
そして3つ目はあさって開かれる「レ・フレール」のピアノコンサート。
このコンサートには夫と行く予定にしており、楽しみである。
さて予定ではこの落語、釜山博物館「小講堂」で開かれるとのことだったが、行ってみると「大講堂」に変更になったとのこと。日本人学校に通う学生たちや、日本語を勉強しているらしい大学生風の学生たちなどをはじめ、さまざまな年代の観客が大講堂の客席を埋めている。
やがて司会者が日本語と韓国語でアナウンス。写真撮影については、公演開始後3分間は可能だがその後はご遠慮くださいとのこと。
私は生で落語を見るのは初めて。笑福亭銀瓶という落語家のことは聞いたことがなかったが、どんな落語だろうかとワクワクしていると、講堂入口(客席の後ろの方)から小走りでご本人が登場。
舞台上に用意された大きな座布団の上に座り、姿勢を正してまずは挨拶。すべて韓国語。
日本では落語家は東京には500人、大阪には200人いる。そのうち東京には韓国語で落語をする女性落語家が一人いるが、大阪では韓国語で落語をするのは自分一人、また韓国で韓国語で落語をする落語家も自分一人、などという話から入っていく。
小噺をいくつか紹介したあと、今日の演目は「ときうどん」と「犬の目」の2つ。すべて韓国語で、上の動画のようなフリートーキングのときの韓国語よりも、実際の落語を話すときの韓国語の方が、はるかになめらかで上手。私はどちらの演目も聞いたことがなかったが、非常におもしろかった。韓国語であれだけの落語を披露するには、相当な練習を重ねたのだろうということは、容易に想像できる。
ここで落語家・笑福亭銀瓶の紹介を少し。
笑福亭銀瓶(韓国名 심정일)は1967年日本生まれのいわゆる在日3世。日本人学校に通い日本語で生活をしていたため、完全な日本語母語話者。
20歳のとき、落語家 笑福亭鶴瓶のもとに弟子入りし、以来落語家として活躍する。やがて自分の祖国・韓国がどんなところか見てみたくて、また祖国に「帰って」きたくて2001年に初めて韓国の土を踏む。
しかし祖国へ「帰ってきた」つもりだったはずが、言葉が全くできないために、祖国・韓国のことを「外国」だと感じた。また韓国人からも、韓国へ「戻ってきた」とはとらえてもらえず、韓国へ「来た」ととらえられたという。
そのことがきっかけで、韓国語が話せるようになり、いつか韓国のことを「外国」ではなく「祖国」だと感じるようになりたいと、独学で韓国語の勉強を始めたそうだ。
韓国人も日本人も、大人も子供も、会場にいる人みながとても楽しんでいたようだった。
やがて落語が終わり、質問の時間。会場に聞きに来ていた韓国人からいくつもの質問が飛び出した。何故、落語かを目指したのか、韓国語で落語をするのにどんな準備をしたのか、どういう勉強をすれば短時間でそれほど韓国語が上手になるのか、将来韓国を題材にした落語をする計画はあるのか…などなど。
小さい頃から、ひとを楽しませること・笑わせることが好きだったため、落語の道に入ったとのこと。また韓国語で落語をするにあたっては、先生と一緒に翻訳した韓国語を繰り返し繰り返し練習したそうだ。そのため、落語で使われる韓国語については完全に頭に入っているが、普通の一般会話になるとまだまだ実力が足りないと。これからも韓国語の勉強を続けていくつもりだとのこと。
また将来のことについての質問の答えには、私は非常に感動した。
私は日本で生まれ育ちましたが、私の体の中には韓国人の血が流れています。韓国と日本の間には、悲しい歴史も存在します。でも、こうやって韓国人と日本人が、落語という一つの共通のものを通して一緒に楽しむことができる、これは素晴らしいことだと思います。私の生まれ育った日本の伝統芸能の一つ・落語を、韓国の人にも楽しんでもらいたいのです。これからもまた韓国で韓国語で落語をしたいと思います。そのためにもっと努力して、次回はもっと素晴らしい落語をお見せできるようにします。また、韓国人の観客に向けて、いつか日本語を勉強して日本に落語を聞きにきてください、日本語で聞く落語も面白いものです、とも言っていた。
約1時間の公演のあと、ロビーでは観客との記念写真に応じていた。
彼がどういう思いで韓国語で落語をしているのか、そのためにどれほどの努力をしているのか、彼のその姿勢に私はいたく感動した。もちろん落語もとても面白かったが、落語が面白かったという印象よりは、韓国と日本という2つの祖国を持つ彼ならではのその姿勢が、大変印象に残った。また次回彼の公演があれば、是非とも見にこようと思う。
Posted by dilbelau at 22:00│Comments(0)
│文化・芸術・エンタメ
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