9歳から始めた綱渡り 25
つづき
同じく 『뉴스천지(ニュースチョンジ)』(4月3日)のインタビュー記事によると、小さいときから綱渡りに打ち込んできたキム・テギュンさんは、高校で学ぶ過程を独学で学び、「高等学校卒業学力検定試験」(日本の高等学校卒業認定試験)に合格。15歳で初めての舞台に立ち、20代前半まで師匠と一緒に民俗村で綱渡りをしてきた彼は、綱の上の世界で忙しい日々を過ごしたと振り返る。
しかし、師匠の故キム・ヨンチョル先生が亡くなり、非常に大きな存在を失った彼は遅い “思春期” を体験することになる。
「先生が亡くなって寂寥感に襲われ、1年半から2年間は精神的に苦しい時期でした。9歳から先生について師弟関係にありましたから、私にとっては泰山のような存在でした。これからどうしたらいいのか分からずさまよった時期もありましたが、その後は再び、綱渡りにまい進するようになりました。
しばらくさまよったことで、彼は以前より強くなったと言う。どうしたらもっと優雅に美しく綱渡りを披露することができるかと深く考えるようになり、遅ればせながら大学で勉強することになった。
「もともと、立ち止まることが嫌いなたちなんです。早くから現場での体験をしてきましたが、ある時期を過ぎると空虚感に襲われました。その時、あらためて自分を振り返り、学校で勉強することを決心したんです。学士、博士という社会的な地位が欲しかったのではなく、綱渡りに役立つことだと判断したからです」と当時を振り返るキム・テギュンさん。
9歳からただひたすら綱渡りの道を歩んでこられたキム・テギュンさん。どんなことでも 「続けること」 は、簡単そうでなかなか難しい。いろいろな困難を乗り越え、「綱渡り」 を芸術の域にまで極めた彼の表情は、とても柔和だった。
綱の上を前に歩いて行くだけでなく、後ろ向きにも歩く(▼)。さらに、両足を綱の上から外しお尻で綱に 「着地」 するような技も披露。股間が痛かったというようなおどけた表情も見せ、観客の笑いを誘う。
綱渡りの合間に観客に話しかけるのだが、それがまた楽しい。サーカスやショーのように、演技者の演技を観客が見るという一方的なものではなく、観客も綱渡りの輪の中に加わっているような一体感が感じられる。それも魅力の1つだろう。
「お尻で着地」 の連続技。いとも簡単そうにやっているが、実際には相当難しいのだろう(▼)。
つづく
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