世界遺産の技 24

dilbelau

2012年05月09日 17:31

つづき

4月3日付の 『뉴스천지(ニュースチョンジ)』 に掲載されていたキム・テギュンさんのインタビュー記事によると、彼は 「10代で綱渡りを習い始め、20代で綱の上を自由に動けるようになり、30代で綱渡りとはどういうものかが少し分かった気がしました。今は40代半ばですが、もし誰かに綱渡りとは何ぞやと聞かれたら、こう答えるでしょう。綱を渡るということは、未だに霧の中を歩いているようだと。ただ、綱渡りをしていて分かったことは、1本の綱の上に自分の体を下ろすことができるということです」。

9歳で綱渡りの道に入り、いまや押しも押されぬ綱渡り界の師と仰がれるキム・テギュンさん(46)。幼い頃、韓国民俗村で故キム・ヨンチョル先生に師事し、公演に出演し始めた。現在は後継者育成のために尽力する彼に、昨年嬉しいニュースが舞い込んできた。綱渡りが、世界的な無形遺産として登録されたという知らせだ。

宙返りに重点を置くサーカス式の外国の綱渡りとは違い、韓国の綱渡りはユーモアあふれる話術で見る人を楽しませる複合芸術。その芸術性が認められたのだ。当時、その知らせを聞いたキム・テギュンさんは嬉しさと同時に、これからの発展のために自分が果たしていくべき責任感をも感じたそうだ。

いよいよ、キム・テギュンさんが綱の上にあがっていく。靴を脱ぎ、滑らないよう足の裏の部分を水で少し濡らす。ピンク色の扇を手に、綱の感触を確かめるようにしながら1歩1歩足を進めていく。時々、バランスを崩しかけたように見せてわざと観客をハラハラさせるような演出も(▼)。



見事綱を渡り切ると、観客から大きな拍手がわき起こる。普段はなかなか見られない公演、しかもユネスコ人類無形文化遺産として登録された伝統芸術とあって、かなり多くの人々が見に来ている。



今度はまた反対側へと渡り始める。話しているときのキム・テギュンさんはとても優しそうな穏やかなお顔だが、綱を渡っている間はさっと表情が変わる。身体中の全神経を研ぎ澄ませているのが分かる。



視線は少し前方の綱の方に向いている。自分の足を見ていてはかえってバランスが崩れるのだろう。



次は、途中まで立って綱を渡っていたのが、中ほどで片膝座りのような姿勢になり、その姿勢のまま綱の上を進んでいく。左足のスネから足首の部分で綱の上を擦って進むため、足首の周りには衣装の下に何か保護材を巻いているようだ。



簡単そうにしているが、何と言っても相手はゆらゆら揺れる綱。ちょっとしたことでバランスを崩してしまうだろう。命綱もないし、地面にもマットなどは敷かれていない。まさに真剣勝負だ。

つづく

関連記事