夏一押しのスタミナ料理
先日、釜山市が発行している日本語新聞 『ダイナミック釜山』 に寄稿した。以下、転載する。
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味よし!栄養よし!値段よし!・・・夏一押しのスタミナ料理 「チュオタン」
韓国の夏のスタミナ料理の代表選手といえばサムゲタンだが、私がおすすめしたいのは「チュオタン」。ドジョウのスープだ。数年前、当時の野田元首相がソウル訪問時に食べたと言えばご記憶の方も多いだろう。釜山での生活も丸3年を迎えようとしていた2011年、韓国人の友人に連れられて食べに行ったチュオタンが私のドジョウ初体験だった。たちまち好物の1つになった。どちらかというと地味な料理ではあるが、おいしくて栄養満点、美容にもよくて値段も手ごろ。韓国料理の隠れたスター選手だ。
日本でドジョウといえば柳川鍋だろうか。精のつく料理として、昔から夏の盛りに食べるものとされていたとか。柳川鍋はドジョウの姿そのままに調理するので苦手だという向きもあろうが、チュオタンはドジョウの影も形もなくなっているので、安心して食べられる。柔らかく煮て骨や皮をこして取り除いたドジョウの身をダシに入れ、味噌やニンニク、ショウガ、コショウなどで味を調えれば出来上がり。好みで粉山椒を加えていただく。うな丼やうな重に山椒が欠かせないように、チュオタンと山椒も相性バツグンだ。ドジョウと言うと泥臭いと思われがちだが、チュオタンは臭みもクセもなく具だくさんの菜っ葉汁といった感じ。そうと知らずに食べたらドジョウが入っているとは気がつかないだろう。
その栄養価はウナギにも匹敵するとの意味で「ウナギ1匹、ドジョウ1匹」とも言われるドジョウは、低カロリーで良質のタンパク質を含む。カルシウムはウナギの8~10倍、鉄分は4倍とも言われ、カルシウムの吸収を助けるビタミンDも豊富。表面のネバネバしたぬめりには美肌効果のあるコラーゲンやコンドロイチンも含まれているという、まさに栄養の優等生だ。しかもウナギより安価と、いいことづくしだ。
韓国語でドジョウは「ミクラジ」または「チュオ」。チュオ(鰍魚)という漢字からも分かるように、一番おいしいとされるのは、冬眠に備えて栄養分をたっぷりためこんで肥える秋だそう。私の行きつけの食堂でも店先の大きな容器に入ったドジョウは、普段は活発に動きまわっているが、冬にはじっと眠っている。気持ちよさそうに(?)眠るドジョウの姿を見ると食べるのが申し訳ない気もしてくるが、食べるからには感謝しておいしくいただくべし。夏のスタミナ食として、そして秋には夏の暑さで疲れた身体の体力回復のため、栄養満点のチュオタンを是非お試しあれ。
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