先日、遅ればせながら、映画 『光海(クァンヘ)、王になった男』 を夫と見に行った。言わずと知れた、イ・ビョンホンが2役を演じる話題作。9月13日に公開され、11月22日に観客動員数1200万人を突破したそう。この日も公開から10週間以上経っていたが、観客はたくさん入っていた。
映画は光海君(クァンヘグン)という実在の王(朝鮮第15代王)に関する話。
朝鮮の初代王太祖の時から純宗に至るまで27代519年間の歴史を編纂した 『朝鮮王朝実録』(1967巻948冊)という記録物があるが、そのうち、光海君の時の記録 『光海君日記』 が、数日分ずつ合計15日分ほど抜け落ちている。さらに 『光海君日記』 には 「可諱之事 勿出朝報(숨겨야 될 일들은 조보에 내지 말라.)隠さねばならないことは朝報(*)に載せるな」という一文が書かれている。(*)承政院(スンジョンウォン=国家機密を扱った王朝の秘書室)が発行するいわゆる官報。
映画は、これらのことに着想し、「記録が残っていない空白の15日間に何があったのか」、「もしこういうことが起こっていたとしたら・・・」 という想像から作られたそうだ。
噂に聞いていた以上に面白い映画だった。イ・ビョンホンの2役演じ分けも聞きしに勝るものだった。ストーリーも、実際にはあり得ないだろうとは思うが、1つの映画作品としてはうまくできていたと思う。
ただ宮中の人物が話す言葉が現代のものとはかなり違い、聞き取れない部分が多かった。大筋のストーリーは理解できるし楽しめたが、どうしても分からない場面が何カ所かあった。映画を見た翌日、すでに映画を見たという職場の上司に聞いてみたら、詳しく説明してくれた。そういうことだったのかとスッキリ納得。おかげでよく分かった。
作品は、実際の史実と作者の想像がうまく織り交ぜられているのだそうだ。例えば、映画の中では、光海君の胸には文禄・慶長の役のときに受けた矢の傷跡があるという設定だったが、あれは史実だそう。
さらに上司は参考にと、光海君について分かりやすくまとめた資料もくださった。
光海君は一方では、朝廷内の党争のため自らの異母兄弟を謀殺したことなどから王宮から追放され廃位され、「暴君」 とされている。
しかしまた一方では、明と後金との関係において、中立外交でうまく困難を切り抜けた現実的な王と評価する人もおり、いわば相反する2つの評価を受けているという点では珍しい王だとのこと。
第15代光海君は第10代の国王燕山君(ヨンサングン)同様、暴君として廃位された王であるため、廟号(世宗、太宗など)や諡号(荘憲英文睿武仁聖明孝大王、恭定聖徳神功建天体極大正啓祐文武睿哲成烈光孝大王など)は贈られていない。朝鮮の国王で廃位されたのはこの2人だけだそう。
それにしても、面白く見ごたえのある映画だった。しかし、映画について説明してくれた上司によると、上司の奥様はイ・ビョンホンのワンマンショーのようだったとやや辛口の評価を下していたそうだ。他にも、リュ・スンニョンやハン・ヒョジュ、キム・イングォンなどいい役者が出ているのに、あまりにもイ・ビョンホンが前面に出すぎていたと。しかし同時に、イ・ビョンホン以外にはあのような難しい2役をこなせる俳優はそういないだろうという評価も。
131分という長い映画だったが、始まると同時に映画の中に引き込まれ、あっという間の2時間だった。しかもこの日は4,000wの割引券を持っていたので、5,000w(約380円)という日本では考えられないような値段で見れたのも嬉しい(週末は大人9,000w)。