総領事の講演

dilbelau

2012年11月26日 08:44

つづき

キャンパス内は平日の午後だったが、意外に学生の姿は少なめだった。総学生会の会長・副会長の選挙が近づいているようで、あちこちに候補者の名前などが書かれた横断幕や垂れ幕を見かけた。

講演が始まる時間が近づいてきたので、会場内へ。私たちが入ったときはまだ人がまばらだったが、開始時間が近づくにつれ学生がどんどん入ってきて、最終的には、空席がないように座っても大勢の立ち見が出るほどだった。東明大学は今年の3月に日本語学科を新設したそうで、この講演にも日本語学部の学生は出席するよう推奨されていたようだ。

講演開始の15時になり、余田幸夫総領事や関係者の方々が入場。まず、同大学日本語学科長の教授からの挨拶と、余田総領事の略歴紹介があり、続いて総領事の講演が始まった。テーマは 「未来志向的な日韓関係」。



余田総領事は天理大学外国語学部朝鮮語学科を卒業後、外務省に入省。延世(ヨンセ)大学やソウル大学でも修学し、中国やアメリカなど各地での勤務を経て、釜山へは1984年に広報担当領事として初赴任。その後、2001年からも釜山勤務となり、2008年から3年間の在済州(チェジュ)日本国総領事館総領事を経て、2011年に再び釜山へ総領事として赴任された。釜山へは3回目の赴任となる。

1人の外務省職員が3回も釜山に赴任するというのは例のないことで、それをうらやむ同僚もいらっしゃったとか。それほど釜山での生活は快適だということだ。

釜山へ3回、済州島へ1回の赴任を通じて感じたのは、韓国は発展の速度が速いということ。その背景には韓国人の判断力・決断力・実行力があると思うが、それは教育の成果だろうと話された。

また日韓の政治面での葛藤は、そう簡単に解決できるものではなく、長期的に互いが協力していかねばならないと思う。政治面での葛藤が両国の国民関係に与える影響は大きく、行事などが中止されたりしていることは残念に思うとも。

さらに、日本国民が韓国について知るきっかけとなったのは韓流だが、韓国のことを広く日本に広めたのは日本のおばさんたちだと思う、という話も面白かった。韓流ファンのおばさんたちは、本当に詳しくいろいろなことを知っているし、またそれを家族や友人など周囲に伝える伝播力は相当大きいと。確かにその通りだ。

文化的な交流といえば、現代の韓流は数百年前の朝鮮通信使と同じ役割ともいえる。この朝鮮通信使をユネスコに日韓共同で登録しようと話を進めているが、ユネスコ登録よりも、登録に向けての過程が最も大切だと思うとも話された。両国が協力して1つの目標に向けて動くことで、文化的な土台ができるのではないかと思うが、この土台をより強固なものにするためには、あななたちのような若い人たちの役割が重要だと、話を締めくくられた。

ご自身の体験や洞察をもとに話された50分の講演はとても興味深く、聞いていた大学生もメモをとりながら熱心に聴いていた。最後に大学側からの記念品贈呈と記念写真をもって散会となった。

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