'10.4.23(金)そこに人がいるから私はシャッターを押す

dilbelau

2010年04月23日 21:53

つづき

この日の写真展オープニングパーティーでは、飲み物や軽食なども用意されていて、作品を鑑賞した後は食べたり飲んだりしながらの歓談の時間になった。その時私たちの近くに、先ほど開会のときに挨拶されていた写真家の方がいらっしゃることに気がついた。

小粋にベレー帽をかぶりジージャンを羽織って、肩に一眼レフカメラをかけているその方は、藤本巧さんが韓国の写真を撮り始めるより前の1950年代から、同じく韓国の写真を撮り続けている方なのだそうだ。

お名前は최민식(崔敏植)さん。



『서울 용산역 앞에서』 (ソウル龍山駅前で / 1957)

藤本さんは 「同じ韓国を撮り続けている者同士として、今日の写真展の私の作品について崔さんはどうお感じになるかと少し心配していましたが、数点おほめの言葉をいただいた作品もあり、とても嬉しく思います」 とおっしゃっていた。

崔さんのお年が83歳だと聞いて、来場者一同ざわめくほど驚いていたのも当然。背筋をしゃんと伸ばして大変姿勢がよく、特にカメラを構えていらっしゃるときのお姿は、とてもとても80代の方には見えない。
(↓ 写真左から2番目の方)



崔さんとちょっとお話ししてみたくて、初対面ながらも夫と声をかけてみた。すると思いがけず、流暢な日本語が返ってきた。崔さんの写真集も是非拝見してみたくなり、タイトルを教えていただけたらと思い 「写真集を拝見したいのですが・・・」 と言いかけると、途中で 「ちょっと待って」 と制し、紙に何かを書いてくださる。

「최민식 崔敏植」

ご自身のお名前と、電話番号を書いてくださったその紙を私たちに手渡しながら、「私のうちはね、〇〇にあるから電話して、一度訪問してください」 と、ご自宅のおおよその場所も教えてくださる。実に気さくに。

写真集が見たいと言うだけの初対面の相手を、いきなり自宅に招いてくださるとは。
驚いたが、そうおっしゃってくださるので、そうさせていただくことにする。その後間もなく、崔さんは会場を後にされた。

さて、帰宅後、崔さんがどんな写真を撮っていらっしゃるのか興味があり、ネットで調べてみたところ、何と2年前の2008年、『夢みる人たちのバイオグラフィー』 という番組で、その최민식 (崔敏植)さんが紹介されているではないか。パート1・パート2に渡って、激動の時代とともにシャッターを押し続けてきた崔さんの様子が放送されている。





また、ある韓国人が書いたブログの中にも、2008年に崔さんのことを取り上げた記事があった(↓↓)。

한국의 앙리 카르띠에 브레송 최민식사진작가
 (韓国のアンリ・カルティエ=ブレッソン崔敏植 写真作家)

「최민식という名前の人の中で、私にとっては2人の최민식さんが有名だ。一人は俳優の최민식(崔岷植)さん、もう一人は写真作家の최민식(崔敏植)さんだ」 という書き出しで始まるその記事は、崔敏植さんのことを、フランスの写真家アンリ・カルティエ=ブレッソン に例えている。

記事の中には、崔敏植さんの撮った写真がたくさん紹介されている(上の白黒写真も)。

こういう崔敏植さんが、私たちをご自宅に招いてくださったとは。
どんなお話しを聞かせていただけるのか、どんな写真を見せていただけるのか、その日が実に実に楽しみである。思わぬことから思いがけぬ方に出会う。ご縁に感謝。

関連記事