おいしいサムゲタンを食べた後、家に帰る途中で銭湯に寄って行くことにした。久しぶりに家の近くにある청암탕(チョンアムタン)へ。入浴料金1人4,500w。いつの間にか値上がりしていた。女性のみタオルを受け取って(男性は脱衣所に備付)大浴場へ。女湯は2階、男湯は3階。
けっこう昔からある銭湯のようで、施設もそこそこ古びており、脱衣室にはなんとなく気だるいような雰囲気が漂っている。大浴場内には温度の違う温湯が2つと、例によって巨大な水風呂1つ、アカスリや身体・髪を洗うための小さな浴槽(湯の汲みだし専用)がいくつか並んでいる。
小さなサウナが2つと、ミニチムジルバンが1つ。チムジルバンといっても、ただ寝ころべるようになっているだけの四畳半くらいの空間だ。
シャンプー・リンスが備え付けられていないのは他の多くの銭湯と同じなのだが、この日は石鹸さえも見当たらなかった(男湯にはあったそうだ)。みなさん常連客のようで、石鹸やシャンプーなど入浴用品をカゴに入れて持参したり、ロッカーの上に保管しているので、必要とする人があまりいないのだろう。
私が湯に浸かっていると、あるおばさんがすぐ隣の小さな浴槽の栓を抜いて湯を捨て始めた。湯を入れ替えようとしているようで、湯が抜けるまで、おばさんは浴槽のそばで身体をマッサージしながら待っていた。
すると、しばらくして別のおばさんがその浴槽に入ろうとやってきて、湯を入れ替えていることに気がつき、栓を抜いたおばさんと一言、二言言葉を交わした。そして、すでにかなり湯が抜けた浴槽に入ってタオルで浴槽内を洗い始めた。
2人の様子から、栓を抜いたおばさんと、浴槽の掃除を始めたおばさんはどうやらこの銭湯の常連客で、互いに顔は知っているというくらいの関係のようだ。栓を抜いたおばさんは、ただお湯を入れ替えようと思っただけなのに、もう1人のおばさんがきれいに浴槽内を磨き上げてくれるので 「そこまでしてくれなくてもいいのに。悪いわね。でも助かるわ」 というようなことを言っていた。
やがて湯が完全に抜け、浴槽内の清掃も終わったので新たにお湯をため、2人はきれいなお湯に浸かりながらその後もしばらくおしゃべりしていた。銭湯の利用客が自発的に湯を入れ替え、浴槽の掃除までするなんて、日本ではちょっと見ない光景だろうと思った。
さてこの銭湯の水風呂も巨大で(温湯の浴槽より大きいくらい)、壁には 「水風呂はプールではありません。 バタ足をしないでください」 という注意書きが貼ってあった。韓国の銭湯では、泳いだりバタ足で運動したりという姿をよく見かけるので、韓国ではNG行為ではないのかと思っていたが、やはりダメなようだ。でも、ここでもスイ~と平泳ぎしているおばさんはいたが。
さて、お風呂から上がって銭湯の前で夫を待っていると、車2台の運転手同士が大喧嘩を始めた。この通りは道幅が狭いのに路駐の車が多く、さらに歩行者も多いため、時間帯によっては車2台がスムーズにすれ違えないこともしばしば。
この時も、路駐の車のせいで2台がうまくすれ違えず、対向車が 「進路を譲らなかった」 ことに一方のドライバーが腹を立てたことで言い争いが始まった。
相手のドライバーも 「何だとコラ」 的に、売り言葉に買い言葉。互いに道路上に停車したまま、一方が車から降り、もう一方に 「おい、降りろ」 と。もう一方も一瞬降りようとしていたが、面倒だと思ったのか降りるのをやめ運転席に座ったまま何か悪態をついたようだ。その態度にさらにカチンと来たおじさんの怒りはおさまらず、大声で罵りながら車から出て来いと言い続けている。
そうこうしているうちに、今度は2台のせいで足止めを食らっている後続車のドライバーの1人が降りてきて、「頼むから進んでくれ。後ろがこんなにつまっているじゃないか」 と苦情を。その言葉におじさんはしぶしぶ車に乗ったのだが、どうにも怒りがおさまらないようでまた降りてきて・・・を何度か繰り返していた。
周辺の店の人たちや通行人も遠巻きに野次馬。最後はやっとおじさんが発車させたが、いやはやなかなか派手な喧嘩だった。
この日のケースとは少し違うが、韓国では接触などの比較的軽い交通事故が起きた場合、双方のドライバーが車から降りてきてその場で大ゲンカするということが少なくないようだ。もちろん、本当に腹が立ってケンカを始めるのだろうが、そのうち周囲に集まってくる野次馬に対して 「自分に非はない。悪いのは相手だ」 というイメージを植え付けるため、自分の正当性を主張するのだと聞いたことがある。そうして野次馬を味方につけるのだと。野次馬を味方につけたところで、その後の事故処理に大した影響はないだろうと思うが。