平田オリザさんインタビュー記事 2

dilbelau

2012年05月19日 08:41

つづき

上演当日、釜山日報に平田オリザさんのインタビュー記事が掲載されていた(2012年5月11日21面)。この記事を読んだ上での公演観覧なので、より楽しみでワクワクしていた。

*****

今年の釜山国際演劇祭に『Suddenly Married』という作品で参加した劇作家 兼 演出家の平田オリザ(50)。『ソウルノート(原作・東京ノート)』や『ソウル市民』3部作、『科学する精神』、『この生は受け入れがたし』、『眠れない夜なんてない』など多くの戯曲が上演され、彼は韓国で最も有名な日本人劇作家だろう。2002年の日韓合作演劇『その河をこえて、五月』にも共同作家・共同演出者として参加。『ソウル市民』や『東京ノート』、『革命日記』などは、劇団「青年団」によって韓国でも上演された。10日、彼にインタビューした。

平田オリザは1990年代、当時の日本の演劇の流れとは逆に、平凡な日常をありのままに表現する作品を作り注目を集めた。しかし彼の作品は、ただ日常を表現しているだけではなかった。平凡な日常に、妙な事件が起こったり状況がおかしな方向に進んだりしてはちゃめちゃになる。今回の『Suddenly Married』も、ある日突然夫婦になったショウヘイとスミエのことを、ショウヘイの兄とスミエの姉は、別居中の自分たちをくっつけようと企てた偽装結婚だと疑う、というストーリー。自分の作品について平田オリザは、「日常で起こる異常について書く傾向がある。日常の中で起こる奇妙な事件や、事件の中で生まれる人間の関係や変化を表現しようとしている」と話す。

日常を表現する彼の特徴は、演劇の形式と関係なく一貫性を示している。『Suddenly Married』は日本における不条理劇の教科書的な作品。彼は「不条理と言うと何かおかしなものが出てくると思われがち。我々の存在そのものが不条理なので、より日常的でリアルに表現しなければならない」と話す。作品で日本の方言を使うのも、不条理は観念的だという考えを捨て、現実感を表現するためだと説明する。作品を通して、観客に何か道徳的なメッセージを伝えようというつもりはないが、今回の作品を見て夫婦とは何か、どうやって夫婦になるのかという部分について考えてくれれば、と話す。

韓国でも人気がある理由を尋ねると、彼ははにかんだような笑顔を見せ「韓国には私に似たような作家がいないからだ」と即答した。また「高齢化をテーマにした『眠れない夜なんてない』のように、目の前に迫る現実問題に共感できる部分を作り、普遍性と日常を表現しているからでもあるだろう」と付け加えた。

劇作家・演出家として精力的に活動している彼は、30年間、他人の作品を演出したのは4編だけというほど、ほとんど全ての作品を自分で書いて演出してきた。彼がより大事にしている部分は劇作。父親も祖父も作家という家庭環境で、自分もまた当然作家になるものだと考えていたが、演劇をすることになるとは思わなかったと。大学時代、演劇の世界に触れ自分で戯曲も書いたが、誰も自分の作品をきちんと理解してくれなかった。結局、演出まで自分でするようになったのが演出家としての始まりだったという。大学時代、交換留学生としてソウルで韓国語を学んだという彼。現在でも、記者の質問はほとんど通訳なしで聞きとれるレベルだ。平田オリザが見せる「日常の異常」の世界を、いざ見てみよう。

▲『Suddenly Married』=11日午後8時、12日午後2時・6時。キョンソン(慶星)大学 イェノ小劇場 051-802-8003
*****



客席最後席で開演を待つ平田オリザさん(▲)。この席で公演を見られたのだと思われる。

つづく

関連記事