あなたの知らない世界
先日、夫が大学の教え子たちに誘われて、韓国で初めてカラオケに行ってきた。夜間の授業が終わったその足で、コンビニでお菓子や飲み物を買い込み、カラオケ屋に向かったのだそうだ。(酒類はNGのようだが、その他飲食物の持ち込みは可)
その後、カラオケを堪能して帰宅した夫は開口一番、「いやー、すごかった。あんなに盛り上がっている学生を見たのは初めてだった」 と、ちょっとしたカルチャーショックを受けた様子。何がすごかったと言って、その学生さん4人の盛り上がりっぷりは、普段教室で見ている彼女たちの姿からは想像つかないほどのものだったそうだ。
4人のうち2人は教室でも活発で外交的な学生さんだそうだが、他の2人は教室では至極おとなしい学生だという印象を受けていたそうで、あのおとなしい学生があんなになるとは・・・としきり。
”あんなに” なるというと ”どんなに” なるのかと言うと、とにかくカラオケ屋にいた間じゅうほとんど座らず、立ちっぱなしで歌えや踊れやの盛り上がりぶりだったと。カラオケ屋に到着して歌い始めたのが20:30、カラオケ屋を出たのが23時ごろだったそうで、その間2時間半、ずっと立ちっぱなしの歌いっぱなし踊りっぱなしだったそうだ。
次から次へと曲を入れ、曲と曲の切れ間なく歌っており、しかも韓国語の歌はそのうちわずか2~3曲だけで、ほとんど全て日本語の歌を歌うのだそうだ。しかも、大変慣れた様子で。
もともとの歌の上手い下手には個人差があるにしても、アップテンポの曲を、中にはラップ調の曲までしっかりきっちり歌いこなすのだそうだ。
あれだけ多くの日本語の曲を知っていること自体驚きなのに、ただ知っているというだけではなく上手に歌いこなせるということに、夫は驚きを隠せない様子だった。よほど普段から日本の曲をよく聴き、よく歌っているということだろう。
夫に、「先生、これ歌えますよね?」 と入れてくれた曲はなんと、なつかしのマッチの 『ギンギラギンにさりげなく』 だったり、森山直太朗の 『さくら』 だったりするのだそうだ。
ほぼ30年も前の歌を、なぜ韓国の大学生が知っているのかと思ったら、『ギンギラギン-』 は韓国でも以前流行っていたのだそうだ。また 『さくら』 は、夫が授業で一度取り上げたことがあったからだと。
また、限られた時間内で少しでも多くの歌を歌いたいがために、曲の間奏部分は早送りでとばし、また歌い終わったら曲の最後まで演奏を聞くことなく即座に歌をとめて、次の曲へと移るのだそうだ。カラオケにかける執念はなかなかのもののようだ。
2時間半盛り上がり続けた学生さんたちは、カラオケ屋を出た後、近くのチムジルバンで泊まる予定だと話していたそうだ。韓国にある全てのチムジルバンというわけではないが、ある程度の規模のチムジルバンは朝まで過ごせるような設備(毛布や睡眠室など)が整っており、安い料金で泊まれるのでホテル代わりに使う人も多いのだ。
年齢的にも、性格的にも、彼女たちの盛り上がりっぷりに一緒になってついていくのは、夫にとっては至難の業だったと思うが、普段教室で見ている学生さんたちの ”素顔” を垣間見る、大変貴重な体験になっただろうと思う。この日の2時間半は、夫にとってはまさに 「あなたの知らない世界」 だったはず・・・。
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