包んでは食べ、また包んでは食べ

dilbelau

2010年09月10日 08:31

先日、大学の講義のための参考図書を探したいという夫と一緒に、西面へ出かけた。本屋へ入る前に、まずは腹ごしらえ。何度か行ったことのある 「고향맛(故郷の味)」 という店に入ってみた。

焼肉や参鶏湯(サムゲタン)で有名な 「삼오정(三五亭)」 のすぐ隣、細い階段を下りた地下にその店はある。階段を下りようとすると、すでに食べ終えた客が何人か上がってくる。また階段を下りて、ガラスの扉の向こうの店内の様子をうかがうと、満席のためけっこう大勢の人が順番待ちをしているのが見える。週末のお昼とはいえ、近くで何か行事でもあったのかと思うほどの混雑ぶりだ。

店内には来店順に名前を書くウェィティングリストのようなものもなく、店の中央あたりにある椅子はすでに待ち客(おばさんたち)でいっぱい。他の待ち客たちは、忙しそうに行き来する店員さんの邪魔にならないように、遠慮がちに入り口付近に立って待っている。

一瞬どうしようかと迷ったが、ここは韓国。韓国人は食べるのが速いので、行列ができていても思ったほど待たずにすむことが多いのだ。この日も、すぐに空くだろうと踏んで、他の人たち同様立って待っていた。

待っている間はすることがないので、自然と人間ウォッチング。

この日の客は圧倒的に女性客が多かったのだが、おばちゃんたちの服の色がピンクや赤など華やかな色が多いのが目立つ。若い女性よりも、中高年のおばちゃんたちの方が派手な色合いの服を身に着けていることが多いのは、大阪と似ている気がする。数人のおばちゃんが集まって、賑やかに迫力満点でおしゃべりしている様子も、大阪のおばちゃんとそっくりだ。

女性店員さんたちは、あまりの忙しさに頭から湯気を立てて(いるように見える)、動き回っている。神経がピリピリしていて、下手なことを言うと雷が落ちそうなほどの様子だ。厨房や洗い場もさぞ戦場のようなのだろう。

そんな風に人間ウォッチングを楽しんでいると、やがて 「はい次の方こちらへ!!」。大勢の待ち客でてんやわんやのようでも、ちゃんと順番どおりに案内している。さすがプロだ。

席に着くと、隣の席に座っていた女性が私に挨拶してくれる。先日の医療コンベンションのとき、とある成形外科のブースにいらっしゃった韓国人女性だ。お母さまと食事に来ているのだそう。それにしてもここ数日で、偶然誰かと会うということが何度か続いている。

私たちは 「고향쌈정식(包んで食べる料理の定食)」 (6,000w)を注文。他にも 「고향순두부정식(スンドゥブ定食)」 (5,000w)や 「고향영양돌솥밥(栄養石釜ご飯)」 (8,000w)など。石釜ご飯も一度食べてみたいと思うのだが、注文を受けてから炊き上げるので時間がかかると言われ、ならば、といつも 「고향쌈정식」 を注文してしまうのだ。

店内満席でかなり混みあっているわりに、さすが準備・手際がいいのだろう、さほど待たずして料理が出てきた。



ご飯と菜っ葉のお味噌汁は1人ずつ出てきて、その他の数々のおかずは好きなものを好きなように包んでいただくのだ。包む葉類としては、サンチュ・ゆでたキャベツや昆布ほか、名前の分からない葉類が数種類。

おかずは肉・魚・野菜・昆布・サラダなどさまざまだが、中でも存在感があるのがサバと大根の煮物(▼)。シジミ汁定食にもよく出てくるアレだ。私はこれをゆでた昆布に包んで食べるのがお気に入りだ。



こちらは肉の甘辛煮(▼)。これもご飯が進む味だ。



そしてチャプチェ(▼)。ほっとする優しい味だ。



などなど、数々のおかずをあれこれといただいているうちに、すっかりおなかいっぱいに。毎回思うが、これで6,000wとは本当にお得だ。

しかし、私たちもそうだったが、量が多くて全部のおかずを残さず食べることはできない。他の韓国人の客が食事を済ませて帰った後のテーブルを見ても、かなり多くの食べ物が残されている。

もともと ”食べきれないほど数多くの料理でおもてなしする” のが韓国の食文化であった(ある)ので、こうして食堂でもたくさんのおかずが出てくることは珍しくない。

最近では、”食べ残しをなくそう” ”食べられる分量だけ調理しよう” ”必要な分量だけ買い物しよう” などという運動が盛んになってきてはいるが、現状はまだまだ改善されているとは言えない。かろうじて、キムチやおかずなどをセルフサービスにし、必要なだけ客に取ってもらうという方式の食堂が少しずつ増えてきているぐらいだろうか。

たくさんの食べ残し料理があるお皿を、無造作に無表情で次々と重ねて洗い場へと下げていくおばさんを見るにつけ、膨大な量の残飯が出る韓国料理の文化の一面を、まじまじと見せ付けられるようで心が痛んだ。

고향맛
(051) 803-1363

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