つづき
先ほど活魚直販場で買ったアナゴとメイタガレイは、この屋台でさばいてテーブルまで運んできてくれる。
こちらでは、刺身を食べる時、日本のようにワサビ醤油で食べたりはしない。ワサビと、초장 (酢醤油=左手前)、そして味噌を好みで混ぜ合わせたものに、刺身をつけていただく。
そしていよいよお待ちかねのアナゴとメイタガレイが登場。
…なのだが、ここでまた驚いた。
こんな形で出てくるとは思わなかった。
左がアナゴ、右がメイタガレイ。アナゴはみじん切りにしてあるので、遠くから見るとまるで白飯のように見える。
日本の刺身のような形を想像していたので驚いたが、考えてみればあんなに細いアナゴを、タイやヒラメのようなスライスにすることは無理なのだった。細かくみじん切りにしてあるのは、ハモの骨切りのよう。
でも、ハモの骨切りのようなのだが、ハモの身が 「一切れ」 としたら、このアナゴは 「一かけら」 という感じ。まさにみじん切り。これをサンチュやエゴマの葉にたっぷりのせ、味噌や酢醤油をつけて巻いてガブリといただく。
メイタガレイも同じくサンチュなどに包んで食べるもよし、そのまま味噌をつけて食べるもよし。
アナゴは骨切りしてあるとはいえ、やはり食べていると 「小骨を噛んでいる」 感触があり、またメイタガレイも同じように小骨を感じる。オンニによると、その小骨を噛む感触がまたおいしさのうちなのだそうだ。
活魚をその場でさばいて出してくれているので、新鮮なことは新鮮なのだが、やはり酢醤油や味噌をつけて食べることに慣れていないので、どうも魚そのものの味より酢醤油や味噌の味の方が勝ってしまう気がする。
さて、ご飯は注文せずひたすらアナゴとメイタガレイをいただいていたのだが、想像以上に量が多く2人ともおなかいっぱいに。オンニも、「私もうおなかいっぱいだから、後はあなた食べて」 と言っていた。
…のにもかかわらず!
”締めはやっぱりこれがなくっちゃ!” ということなのか、私に韓国料理をいろいろ味わわせてあげたいというお気持ちからか、オンニはやおら店員に 「매운탕 (メウンタン)」 を注文。
内心軽く驚く私…。
「こんなにおなかいっぱいなのに、まだ食べるの?」
「しかも、辛いメウンタンを?」
まあでもせっかくの機会だし、「初体験」ついでにメウンタンの初体験もよかろうと思いしばし待つ。
やがて運ばれてきたメウンタン。
ダシ用の魚のアラ、野菜、エノキダケ、スジェビ(すいとん)などが入って、上には真っ赤なコチュカル。待っている間にオンニに辛くないのかと尋ねたら 「そんなに辛くないわよ」 と言っていたけれど、やっぱり辛そう…。
オンニはまず鍋に2人分のスプーンを突っ込む。
「こうやって熱い中にスプーンを入れておけば、熱湯消毒の代わりになるでしょ。
でも、食べる時スプーンが熱いから気をつけてね」 と。なるほど。
テーブルに運ばれてくる前に、もう火は通してくれてあるので、スープが温まればOK。まずスープを一口。オンニは一言、
「あー、やっぱり辛くない」
「……」
まあ、激辛というわけではないが、やはり私の口には「辛くない」ことはない。スープが熱々なので余計に辛さを感じる。スープには山椒の粉も入れてあるようだ。魚のアラがたくさん入っているので、いいダシが出ているはずなのだが、残念ながら私には辛さの方が勝ってしまい、ダシの旨みはあまり感じられなかった。
いやはや、それにしてもポンテギといい、刺身のみじん切りといい、メウンタンといい、今日はたくさんの初体験をさせてもらった。観光客が多く訪れるようなレストランよりも、こんな地元の人たちに人気のある食堂の方が、その土地の食文化を体験するにはもってこいだと思った。
隣のテーブルでは、60~70歳代と思しき女性たち5~6人ぐらいが、焼酎を飲みながらメウンタンをいかにもおいしそうに食べていた。いやはや韓国の女性は本当に強い!
つづく