2011年06月26日

ポシンタン

先日、職場の上司や同僚たちと生まれて初めて 「보신탕(補身湯=ポシンタン)」 を食べに行くことになった。いわゆる犬肉のスープだ。

参鶏湯(サムゲタン)を出す店の中には、メニューにポシンタンも並んでいる店も少なくないし、他の客が食べているのを目にしたことも何度かある。しかし自分で食べてみるのは初めてだ。

どうしても食べてみたいと思っていたわけではなかった。しかしせっかく韓国に住んでいるのだから一度ぐらいは・・・と漠然と思っていたところにお誘いがあったので、いただいてみることにしたのだ。

もちろん愛玩犬ではなく、食用の犬を使った料理だとは聞いていても、やはり多少の抵抗を感じなくはない。牛や豚や鶏は普段何の抵抗もなく、おいしいおいしいと食べているのに。犬はペットや番犬として人間と深いつながりがある動物だというイメージが強く、食用の動物として見ていないからだろう。

犬肉の味や食感は牛肉・豚肉・鶏肉、どれに近いかと尋ねると、上司の一人が 「人肉に一番近いと言われてるそうだよ。もちろん(人肉は)食べたことないけどね。」(当たり前です。)筋肉と脂肪の比率など肉質の成分が似ているということらしい。

ポシンタンは滋養強壮の効果があるとのことで、韓国ではサムゲタンと並んで、夏のスタミナ食として食べられることが多い。夏の間でも、特に복날(伏日=ポンナル)に食べる習慣がある。伏日は초복(初伏=チョボク)、중복(中伏=チュンボク)、말복(末伏=マルボク)の3日間ある。初伏は夏至後の第3庚の日なので、今年は7月14日。中伏は夏至後の第4庚の日なので、今年は7月24日。そして末伏は立秋後最初の庚の日なので、今年は8月13日。

ポシンタンのもとの名前は개장국(ケジャンクッ)。しかしオリンピックのソウル(88オリンピック)への誘致にともない、欧米諸国に対するイメージダウンを避けるため、1980年代当時の政府は犬の食用を禁止。犬肉の料理を出す店に対する取り締まり政策を強いていた。その取り締まりを避けるため、ポシンタンという名前の代わりに作られた名前が영양탕(ヨンヤンタン=栄養湯)や사철탕(サチョルタン=四チョル湯)。犬の鳴き声 「モンモン(わんわん)」 から、멍멍탕(モンモンタン)と呼ばれることもある。

さて、韓国生活4年目にして初めてのポシンタン。職場の上司たちと、新聞社の近くにあるポシンタン・サムゲタンの店へ。料理は上司があらかじめ予約注文してくれていた。こちらは犬のレバーなど(▼)。牛のレバーと変わらない。くさみもなく、ポソポソしていず適度にしっとりしていて美味。

ポシンタン

付け合せは、カクトゥギや生タマネギ・青唐辛子・ピクルス・ニラの和え物など(▼)。

ポシンタン

そしてスープ(▼)。犬肉を煮込んで作ったスープだが、香辛料の香りがきいていておいしい。言われなければこれが犬肉のスープだとは分からない。このスープにはニラが少し浮かんでいるだけで、具は入っていない。

ポシンタン

そしていよいよ木の板にのせられて、犬肉を茹でたもの(수육=スユク)がドーンと出てきた(▼)。肉ばかりこうやって出されると迫力がある。適度な厚さにスライスされているが、それぞれ赤身の部分にゼラチン質がついている。

ポシンタン

肉をつけて食べるソースはこちら(▼)。唐辛子ソースにカワミドりの葉を荒く刻んだもの、おろしショウガ、すったエゴマを加えてよく混ぜる。カワミドリの葉は香りが強いので味のアクセントにもなり、臭みを消す役割もする。

ポシンタン

いよいよ生まれて初めての犬肉。どんな味だろうかとおそるおそる口に入れてみる。一切れが大きめなので口の中がいっぱいに。・・・・・・予想以上においしい。食感も味も牛肉や豚肉とさほど大差ないような印象だ(鶏肉とは全く違うが)。歯ごたえはけっこうしっかりしている。

ゼラチン質の部分は食感・味ともに好みが分かれるだろうが、赤身の部分は正体を知らずに食べたら犬肉だとは気がつかない人もいるのではないだろうか。

「ポシンタンは焼酎と一緒に食べるのが決まりなんですよ」 と上司。もちろん決まりではないが、それくらい相性がいいということだ。サムゲタンに朝鮮人参酒がつきもののように、ポシンタンには焼酎ということらしい。

私がスープを飲み終えたのを見た上司が 「気に入ったのならおかわりもできますよ」 と。おいしかったのでお願いしようかと思っていたら、先ほどのとは違うスープとご飯が運ばれてきた。

こちらは犬肉と野菜入り(▼)。先ほどのスープはいわば前菜的なもので、こちらが 「ヨンヤンタン(ポシンタン)」 だ。先ほどのスープにエゴマの油が加えられており、しっかりした味だ。これまたおいしい。

ポシンタン

ポシンタン

おいしい、おいしいといただいていると、すっかりおなかいっぱいに。そりゃそうだ。スープ2杯に肉もたっぷりいただいているのだから。

ちなみにこの日は上司がご馳走してくださったが、メニューにはヨンヤンタン(8,000w)、ヨンヤンタン(特)(10,000w)、スユク(茹でた肉=大55,000w、中40,000w、小30,000w)、スユク定食(12,000w)などとある。ちなみにサムゲタンは10,000w。

昔は食べるものがなくて犬肉を食べていたこともあったが、今は飼育場で飼育している食用の犬を使っているのだそう。それでもやはり犬肉を食べる習慣がない日本人にとっては、「犬肉を食べる」 ことに対する抵抗がある人も多いだろう。韓国でも若い世代の中には抵抗のある人が少なくないとも聞く。

意見が種々分かれる料理だとは思うが、韓国の食文化の一つであることには違いない。

ポシンタン

장수영양탕(チャンスヨンヤンタン)
釜山市東区水晶2洞190-1
(051) 467-4404
営業時間:9~22時



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この記事へのコメント
食文化の否定はその国の文化の否定です。
次回はポシンタンに挑戦したいと思います。
Posted by 東京太郎 at 2013年02月20日 21:38
是非。
お気に入りのC1との相性もバツグンだと思います。
Posted by dilbelaudilbelau at 2013年02月20日 21:49
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    コメント(2)